■「ホーム/新着情報」のページ(2023.5.16)関連資料

  

 宮島入島制限―何が問題か

                  広島大学名誉教授 田 村 和 之

1 宮島入島制限とは

  廿日市市による「G7サミット宮島地区説会」の「開催報告」によれば、「宮島島内への入島制限が行  

 われる」とのことである。一種の入島禁止である。「宮島へ入島する際には外務省が発行する識別証及 

 び車両証が必要」であるとのことである。

  具体的には、次のような措置が講じられる。

 ㋐「一般観光客の入島が規制され」る。

 ㋑「住民、通勤通学者等は識別証の提示により入島可能」

 ㋒「宿泊の予約を入れないこと」「宿泊予約のキャンセル」をお願いする。

2 何が問題か―問題の所在

  日本国内の一地域である廿日市市宮島町の区域に「入る」ことは、本来、憲法が保障する国民の自由   

 であるところ、なぜ「識別証」がなければ、宮島地域に入れないのか。

 憲法22条1項は「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。」と  

 定め、居住・移転の自由を保障する。移動や旅行が居住、移転の自由に属することは明白である。この   

 自由は国民の「身体の自由」に関わるものであり、安易な「公共の福祉」による制限は許されない。以

 上は、憲法学の定説である。

  識別証を所持しないものは宮島への入島ができないとする措置は、きわめて強い「移動・旅行の自 

 由」の制限である。

3 具体的な検討

 ―「識別証」を所持しない人は宮島への入島ができないこと(入島禁止)について―

 次の①及び②が基本的な視点である。

 ①日本国内の一定地域への立入り(宮島入島)を制限・禁止するには、法律の定め(根拠)が必要で

  ある。

 ②この措置を講じる必要があるとしても、法律の定めるところにより、必要な範囲内で行うことが求め 

  られる。しかし、識別証を所持しなければ宮島に入島できないとする法律は存在しない。

 (多くのことが明確にされていないので、以下では疑問符をつけた文章となることがある。)

 ③外務省が識別証を発行するというが、同省にこのような権限があるとする法律の定めはない。

 ④報道によれば、5月2日、廿日市市は、3000人余りの識別証の発送業務を開始した。同市は、この業

  務を外務省から委託されて行っているようである。そうであれば、外務省と廿日市市の間には業務委 

  託契約が締結されていることになるが、このように考えてよいか。

 ⑤宮島フェリーの運航会社は、識別証を所持しない人には乗船券を販売せず、乗船を拒否するのか。こ 

  の措置は海上運送法12条違反ではないか。

 ⑥宮島口側にチェックポイントが置かれ、「保安検査」を実施するとのことであるが、誰が行うのか。

  外務省職員が行うのか。それとも廿日市市職員や警察官などが行うのか。識別証を持たない人は、チ

  ェックポイント通過を拒むのか。この措置には実力行使を伴うのか。チェックポイントを通過しない

  で宮島に入島した場合(入島しようとする場合)、どのような措置が講じられるのか。

 ―その他の規制・制限―

 ⑦前述の㋒は、事実上、憲法の保障する営業の自由の制限であるから、法律の定めが必要になるのでは

  ないか。かりにこの制限が可能であるとしても、損失補償が必要ではないか。

 ⑧広島サミット県民会議は、「首脳等の移動ルートにある商店等にはシャッターを閉めてもらう」こと

  を求めている、法令に基づく措置か? それとも単なる要請か。この要請に従わなかったときは、何

  らかの措置が行われるのか「シャッターを閉めろ」などは、戦前を彷彿させるものである。

おわりに

 宮島入島制限・禁止などについて、現在、信じがたいほど強い秘密の取扱い(秘密行政)が行われてい 

 ることに注意する必要がある。                       (2023年5月4日記) 


■「ホーム/新着情報」のページ(2022.12.28)関連資料

 

 違憲の「安保3文書」の閣議決定に抗議し

         白紙撤回を求めます

 

 岸田文雄首相率いる政府は12月16日、今後の外交・防衛政策の指針となる「国家安全保障戦略」及び「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」の「安保関連3文書」を閣議決定しました。これには「敵基地攻撃能力」の保有が明記されており、それを「反撃能力」と言い換えたところで、国際法の禁じる「先制攻撃」になる危険性を消し去るものではなく、戦後日本の国是として堅持してきた憲法9条に基づく「専守防衛」から逸脱するものと言わざるを得ません。加えて、その費用を含む今後5年間の防衛費を総額43兆円と現行計画の1.5倍以上に増額し、財源を法人、所得、たばこの3税の増税で賄うとして、東日本大震災からの復興に使うための復興特別所得税の流用まで盛り込んだばかりか、戦時国債の発行で軍事費を担保し戦争の遂行に繋がった教訓から戦後は“禁じ手”とされてきた防衛費に充てる国債発行にも手を付けるなどというのは、コロナ禍や物価高騰に苦しむ国民の生活をさらに圧迫するもので到底看過できません。

 

 岸田首相自身が言うように、まさに「戦後の安全保障政策の大転換」です。それが国民的議論はおろか、国会での審議もないまま、一片の閣議決定で実行に移されてよいのでしょうか。衆院広島1区選出の首相の地元紙、中国新聞は17日付の社説で「平和憲法をゆがめるな」と題し、「国民の理解と合意を欠いたまま防衛力強化に突き進むことは許されない。平和国家の岐路である。まずは国会で徹底的に議論するべきだ」と説きました。他の地方各紙からも厳しい批判の社説掲載が相次ぎました。全国紙も、例えば朝日新聞は「首相は会見で、防衛力強化は『国民の協力と理解』なしには達成できないと述べた。ならば、来年の通常国会を始めとする開かれた場で、自分の言葉で説明を尽くし、必要な見直しを躊躇すべきではない」、毎日新聞は「平和国家としてのあり方をなし崩しに変え、負担を強いる。それでは、新たな安保戦略に対する国民の理解は得られまい」と指摘しています。

 

多くの有識者からも疑問や批判の声が上がっています。そのうち、憲法や国際政治学者、ジャーナリスト、市民団体代表らでつくる「平和構想提言会議」(共同座長=青井未帆・学習院大教授、川崎哲・ピースボート共同代表)は政府の安保戦略への対論としてまとめた提言「戦争ではなく平和の準備を―“抑止力”で戦争は防げない―」の中で、こう述べています。「政府・与党は『抑止力を高める』とするが、実際には戦争のリスクを高める。北朝鮮の核ミサイル開発、中国の軍備増強や海洋進出は重大な問題だが、日本の対応策が軍備増強や攻撃態勢強化ばかりなら、平和的解決は遠のく一方だ。今日の軍事的緊張がエスカレートすれば、戦争は現実となる。東アジアにおける戦争は世界の経済、食料、環境に壊滅的な影響をもたらす。軍事的な『勝利』の想定に意味はない。軍事力中心主義や『抑止力』至上主義は極めて短絡的で危険だ。抑止力は、武力による威嚇に限りなく近い概念。安保論議の中心に据えられている状況は憂慮すべきだ。持続可能な安保のため、抑止力の限界を認識し『抑止力神話』から脱却しなければならない」と。岸田首相にはぜひ重く受け止めてほしい提言です。

 

私たちの所属する日本ジャーナリスト会議(JCJ)は戦後、「再び戦争のためにペン、マイク、カメラを取らない」と誓って創設したものです。とりわけ被爆地ヒロシマで活動する私たちは、戦争と平和、被爆者や核兵器をめぐる問題には常に重大な関心を抱き、意見表明や論考の掲出、情報の発信などに努めてきました。それだけに、今回の安保3文書の閣議決定は内容においても手続きにおいても平和憲法を踏みにじるものであり、断じて容認できません。再びこの国をあの戦争の惨禍をもたらす道へと向かわせる岸田内閣の愚挙に抗議し、白紙撤回を求めます。

 

 2022年12月26日

      日本ジャーナリスト会議(JCJ)広島支部 


■「ホーム/新着情報」のページ(2021.8.17)関連資料

 

 市民と野党の力で政権交代を実現する広島集会アピール

 

 先の参議院再選挙で、私たちは宮口治子さんの当選を実現することができました。これは、候補者の大健闘と共に、オール立憲野党が一致結束して総力を発揮して闘った事による勝利です。

 市民連合をはじめ諸団体の大きな応援がありました。そして、それは金権選挙を許さないという市民の強い意志表示でもありました。 

 今、私たちは日本の国の政権選択を問う衆議院総選挙を目の前にしています。

 菅自公政権は、戦争する国づくり、立憲主義をないがしろにする政治に踏み込んだ前安倍政治をそのまま引き継いだ政権です。日本学術会議の会員任命拒否に始まり、75歳以上の医療費2割負担、土地使用規制法等悪法を強行しています。最大の政治課題のコロナ感染症対策は、不十分な対策に終始したうえ、市民の命と健康を危険にさらす東京五輪・パラリンピックを強行しました。このような腐敗した政治を変え、立憲主義に基づいた平和日本の構築、市民の暮らし優先の政治、ジェンダー平等を基本にする全ての人々の基本的人権を保障する政治が、今こそ求められています。それを、私たちは一致結束した立憲野党共闘に求めています。

 野党共闘は、国会の中でも様々な課題で前進がみられています。また、種々の選挙で共闘が積み重ねられています。来たる総選挙を前にして、中央でも強力な合意が求められます。それと共に各地での共闘への協議、合意が必要です。

 

 私たちは先の参議院再選挙で、野党共闘による輝かしい勝利を手にすることができました。各野党の努力に信頼を寄せることができました。目前の総選挙に向けて県内4野党による協議を加速させ、県内における野党共闘を県民に明らかにしてください。

 

 政権交代を実現する力は、野党共闘にあります。市民と野党の共同にあります。その中でこそ、野党候補者は小選挙区で自公候補者に勝利することができます。私たちは、全県下で市民連合をつくる運動を進めていきます。共同して闘う市民の力、野党共闘を進めていく各野党の努力、各候補者の健闘という三つの力を結集して、広島選挙区において勝利しましょう!政権交代を共に実現していきましょう!

     2021年7月24日

                       市民と野党の力で政権交代を実現する広島集会


■「ホーム/新着情報」のページ(2021.7.21)関連資料

 

   旭川医大で取材中の北海道新聞記者の

    不当逮捕に断固抗議する

 

 国立大学法人旭川医科大学で学長解任問題を取材中の北海道新聞の記者が建造物侵入容疑で大学職員によって現行犯逮捕され、北海道旭川東警察署に48時間身柄を拘束されるという事件が起きた。国立大学法人である同大は公共の施設であり、研究・教育活動の妨害や器物損壊の恐れがあるといった明白な理由がない限りいたずらに市民の出入りを規制すべきではなく、取材記者の出入りも認められて当然である。ましてや、地元に限らず広く重大な関心事となっていた問題について取材活動中の記者を逮捕・拘束するというのは不当極まりなく、報道の自由、国民の知る権利を侵害するもので断じて容認できない。

 同大では昨年12月以降、各種メディアで報じられてきたように吉田晃敏学長による数々の不祥事が発覚した。そうした中で今年6月22日、学長解任の是非を協議する会議が非公開で開催された。その際、大学当局が事前に新型コロナウイルス感染対策を理由に記者を含めた学外者の立ち入り禁止を通知していたことをもって、取材目的で構内に入り実際に取材活動をしていた記者の行為を「不法侵入」と主張することは筋違いも甚だしい。これは、大学側が一方的に「取材拒否」をしたものであって、むしろこうした取材拒否やそれまでも情報公開に消極的対応を取り続けてきた大学当局や、大学の求めに応じて不必要な拘束を行った警察の姿勢こそが問われるべきである。

 一方で、当該記者の所属する北海道新聞社の対応にも納得できない点が多々ある。逮捕翌日の朝刊で「容疑者」呼称を付けて実名で報じ、「事実を調査し、読者に説明します」とコメントしただけで、ただちに大学と警察に抗議し、記者の釈放を求めなかったのはいかなる理由があれ信じ難い。逮捕から2週間後の7月7日にようやく公表された社内調査結果の報告でも、当該記者が社に届いていた立ち入り禁止通知を知らされないまま上司や先輩の指示のもとに現場で取材に当たっていたことを明らかにしながら、「記者教育に問題があった」「情報共有や指示の不徹底」などと釈明に終始し、取材で発生する問題の責任を3カ月の新人記者に負わせて会社としての責任を棚上げするありさまには憤りすら覚える。加えて、大学や警察の対応の問題点に何ら触れないというのでは、報道機関としての存在意義を自ら投げ捨てるものと言わざるを得ない。

 今回の事件はマスメディアの取材現場が置かれている厳しい現実を浮き彫りにした。このまま看過すればジャーナリズムをめぐる危機的状況はさらに深刻さを増すだろう。この流れに抗していくことは我々一人一人に突き付けられた緊要な課題として受け止めなければならない。その決意のもと、我々は日本ジャーナリスト会議(JCJ)広島支部2021年度総会の場において今回の事件における旭川医大と道警、そして道新の一連の対応に強く抗議する。

    2021年7月18日

           JCJ広島支部 2021年度総会参加者一同

 


■「ホーム/新着情報」ページ(21.2.15)  関連資料

 

 母のおなかの中にいる命を傷つける兵器で

   平和が守れるはずがない

        ー きのこ会会見詳報 ー

 

    核兵器禁止条約が発効した21年1月22日午前9時から広島市役所内の広島市政クラブで、きのこ会の長岡義夫会長、平尾直政事務局長、原爆小頭症被爆者の川下ヒロエさんの3人が記者会見。支援会員の河宮百合恵さんが後方で見守った。

 まず長岡会長が条約発効にあたってのメッセージを読み上げた後、質疑に応じた。質疑応答の詳細は次のとおり。

 

 良いことだと思います―小頭症のヒロエさん

 

NHK ヒロエさんに。今日世界で核兵器が禁止ということになっ 

    た。どういうふうに今日を迎えましたか。

ヒロエ 詳しいことは分からないので…

長岡 (隣から)喜ばしいことだよね。核兵器がなくなるってことは 

    きのこ会の望みでもあるし、お母さんたちの望みでもあった   

    はずですから良いことだと思いますよ。

ヒロエ はい。

長岡  ヒロエさんはどう思いますか。

ヒロエ その通りです。

長岡  そう思いますか。

ヒロエ はい。

 

 核の傘に守られた平和が真の平和と思っておりません

 

朝日  長岡会長は弟さんの立場で会長という重職を担われている。

    会の発足に尽力されたお母様たち世代は、もうこの世にいな 

    い。親御さん世代は今日この日をどんな風に迎えているとご  

    家族の一員として思うか。

長岡  そうですね、きのこ会発足が1965年ですか。その時点か 

    ら核兵器の廃絶は目的の一つに入っていまして、これは廃絶    

    するまでのまず大きな一歩なのかなと思うので、これが50ヵ

    国の批准によって発効したというのは両親たちみな他界をし

    ておりますけれども、きっと喜んでくれておると思います。    

    被爆者団体のいろんな発言があると思うんですけど、それと

    意を同じにしております。

読売  会長に。条約に日本政府は参加していないが受け止めは。

長岡  核の傘に守られた平和っていうのが真の平和とは私たちは思

    っておりません。日本政府は核保有国と非保有国の橋渡しを

    するという言葉をよく使っているが橋渡しという言葉が私た 

    ちにはよく分かりません。逆に核が必要なんだという言葉に

    響いて聞こえて仕方がないところがあります。大きな力では

    ないにしてもゼロではない。 

読売  これから会としてどういった活動をしていくか。

長岡  私たち主な活動の目的は会員たちが残された人生、もう今年

    で75歳になるわけですけど、穏やかに、彼ららしく生活を

    していくことの支えといいますか支援をしていくことを主に 

    考えております。小さな小さな会ですから大きなメッセージ 

    とか訴えはできないんじゃないかと自分たちでも思っており                                                                        

    ますけれども、この延長線上に核兵器の廃絶がつながった

    り、平和がもたらされるんじゃないかなという希望を持って

    おります。

共同  原爆小頭症の存在はまだ知られていない。そういった意図も

    あってきょう会見を開かれたのかとも思うが。

長岡  いちばん政府にお願いしたいのは核兵器禁止条約に署名、批

    准をしていただきたい。私たちはそれを願ってきたわけです

    し、これからも願っていこうと思っております。被爆者すべ

    てそういう思いでみなさんいろんな運動をしてこられてるん

    じゃないかなと思います。大きな力ではないにしてもゼロで  

    はない、限りなくゼロに近いけれどもゼロではない。そうい

    うとらえ方をしております。

 

 表に立つことを控えていた親たちも核廃絶の願いは強かった

 

中国  長岡さんに。核兵器禁止条約にいつごろから注目されていた

    か。また前文の中に女性、母体への影響を強調した部分があ

    る。そのあたりは小頭症の被害につながるものだが、どう

    か。

長岡  会としては会員の支援をすることがメーンになりがちで、政

    治的な動きはあまりしてこなかった。会員の両親たちが生き

    ていたときもあんまり表に立つことは控えてたというか、一 

    歩も二歩も引いていた。被爆者団体の運動から。ただ、願い

    は強いものがあったと思います。母親、父親。そういう思い   

    を抱きながらの運動だったと思うので、女性うんぬんってい

    うのも、もちろん母親の胎内でというのが含まれていると思

    うんですけど、やはり放射線によっておなかの中にいる小さ

    な命をも傷付けてしまう。そういう兵器で平和が守れるはず

    がない。そういう思いは常に抱いております。

中国  長岡さんがお母様から聞かれたことで、実態として伝えたい

    ことはありますか。

長岡  実は母親から生前にですね、きのこ会のことを頼むとか言葉

    はひと言もなかったわけで、会長であった母親が他界しまし

    て6年間は会長職が不在であったんですけれども。事務局と

    していろんな支援を受けていて、その事実を知るにいたって

    ですね、やっぱり家族である自分が何もしないっていうのは 

    それはないだろうっていう、まったく本当にきのこ会の運動 

    に関して知らなかったわけで、理由になるかはわかりません   

    けれども。言い訳っぽく聞こえるかもしれませんが、ほとん

      ど私は母が存命中は活動はしておりませんでした。親たちは

              引き継ぎたかった思いはあったかもしれませんけど、その点

              では親不孝したのかなとは思っております。

中国   被爆体験とかお兄さんの出産の記憶とかを生前に聞かれたり

             は?

長岡  ABCCの対応については、調査はするけれども治療はしない

             っていう組織に対して憤りを感じていたというのはよく耳にし

             た言葉。それ以外はあまり聞いた覚えがありません。

            (ABCCは)原爆小頭症の子どもたちが生まれた原因は明ら

             かに核兵器の放射線であったと判明した後も母親たちには栄養

             失調が原因である、そういうことを言っていた、言い続けてき

             た。米国本土ではずいぶん早くから論文が発表されていました

             が、日本語に翻訳されたのが10年後ということで日本の専

   門家たちもある程度のことは分かってたらしいんですけれど

           も、そういうことが要因できのこ会が発足する時期が遅れたの

           かなと。いろんな要因があると思うんですが、そのへんもある

           のかなと思っております。

 

 支える親は全員が亡くなり、面会すら難しい―小頭症被爆者の近況

 

朝日  ここに来られていない小頭症被爆者の近況を教えてほしい

長岡  大変難しい質問で、胎内被爆の仲間ではあるんだけれども、

           ひとくくりにできない難しさがあります。というのも、寝たき

           りの人もいますし、現在は入院して透析を受けている会員もお

           りますし、昨年も1人亡くなったんですけれども。だから彼女

         (ヒロエさん)の場合いちばん元気なんですよ。幸せな存在なの

           かなと私は思っているんですけれども。ひとりでは何しろ生活

           は成り立たない。お金の勘定してもらっている人も、成年後見

           を受けている人もおりますし、そのへんで…親族に支えてもら 

           っている人はとても幸せなケースで、他人にお金を払って成年

           後見のシステムを利用せざるをえない人とか、姪御さんが抱え

           ておられたり、老人施設に入ったり。だからそういう、ひとく             くりにできない状態があります。

平尾    補足をさせていただいてもよろしいでしょうか。今回小頭症

           の当事者として川下ヒロエさんに同席してもらっていますけれ

           ども、基本的に他の会員たちは病院に入院していたり施設に入

           所をしていたりとか、そういう方についてはいまもう面会すら

          難しい、外に出ることも難しいという状況になります。私たち   

         支援をしていながらもうこの1年近く会えないという状況が続い

         ています。

             川下ヒロエさんは1946年4月2日に生まれて、小頭症の認

  定を受けたのが1988年、42歳の時です。お母様とずっと2

  人暮らしをされていたんですけれども、お母様は2014年に亡  

  くなられました。川下さんのお母様はきのこ会の親としては最後

  の親御さんで、川下さんのお母様が亡くなられたことできのこ会 

  に所属する親の世代はいなくなりました。なのでもういま原爆小

  頭症の子どもたちを支える親というのはいない。誰も支える人間

  がいないというそういう状況のなかで生きなくちゃいけない状

  況。もし母親のおなかの中で被爆することがなかったらもっと違

  った人生を歩んでいたはず、であるにもかかわらずこのような、

  人によっては寂しい、孤独な状況が今も続いているという状況で

  す。詳しいことは資料にお配りしましたが、広島市にいる方は、

  広島市には専任の相談員がいますので、ある程度のケアはしても  

  らえますが、広島から離れた地域にいる小頭症の方々については

  直接的なそういう支援の手がなかなか届きにくいところがありま 

  す。ましてや施設に入ってしまったりすると、どのようにアクセ

  スするかも難しい、そういう状況にあるとご理解いただければと

  思います。

 

 唯一の被爆国と言っている政府が背を向けてどうするのか

 

NHK 長岡さんにあらためて今日の条約発効の受け止めと、今後に

   ついて。

長岡 全面的に歓迎の姿勢というか、そういう思いで受け止めており

   ます。今後というのも政府に対しては橋渡し役とかいう都合の

   良い言葉ではなくて、僕から言えば逃げているな、背を向けて

   いるなという思いがありますから、やっぱりちゃんと批准をし

   てもらって。政府は唯一の被爆国と言っているわけですから、

   そこが背を向けてどうするの。私はそこらへんですごく矛盾を  

   感じています。

   他の被爆者団体と同意見です。今後に関して言えば、その流れ

   できちんと世界の流れをくみ取って日本政府にはそういう動き

   をきちんとしていただきたい、対応もしていただきたい。そう

   いう風に思っております。

朝日  きのこ会の他の仲間達にいまどんな気持ちですか

ヒロエ みんなにも長生きしてほしいって思います。

長岡  いつも言ってることなんですけど、幸せな生活。今後穏やか

    に生活をしてほしい。僕たちはそれを支えるために会の運動

    をしております。                                                                                                                                  (21.2.15)


■「ホーム/新着情報」ページ(21.2.14)  関連資料 

                   要 望 書

 

 本日、核兵器禁止条約が発効しました。「唯一の戦争被爆国」を自認し非核三原則を掲げる日本国政府は、この核兵器禁止条約に署名・批准をしてください。

 

 核兵器は単に「巨大な威力を持つ爆弾」ではありません。ひとの細胞を遺伝子レベルで傷つけ

る人類史上類を見ない「悪魔の兵器」です。被爆の後、生き残ったと思っていた者の命をも奪い

ます。核兵器から発せられる放射線は、がんなどの致命的な病を誘引します。しかし、それがい

つ発症し、いつ命を奪うのかはわかりません。いわば「見えない時限爆弾」を人体に埋め込むよ

うなものです。しかもそれは被爆から75年たった今もなおかつ被爆者たちを苦しめ続けていま

す。

 

 核兵器の放射線は、戦場から最も遠いはずの、母親の胎内で芽生えた小さな命をも傷つけます。

原爆小頭症は、妊娠早期の胎児が核兵器の強力な放射線にさらされることでおこります。放射線

の影響で、生まれながらに脳の発達などが妨げられ、知的障害、内臓疾患、股関節の異常、指の

欠損など様々な障害を負いました。もし母親のお腹の中で被爆することさえなかったら、彼らは

まったく別の人生を歩んでいたはずです。

 

 私の兄は爆心地から900メートルの木造家屋の中で胎内被爆した原爆小頭児です。まもなく75

歳になりますが、今も簡単な計算すらできません。買い物ではどんな小さなものでも必ずお札を

出します。お札を出せばお釣りが返ってくるからです。兄の財布は小銭でいっぱいですが、彼は

それを使うことはありません。小銭の使い方がわからないからです。

あるとき兄は私に言いました。「わしが原爆にあわんかつたら、どうなったと思う?」。私は答

えに困りました。

 

 知的障害のある小頭症被爆者たちは、自らの口で「核兵器の廃絶」とは言いません。しかし、

その存在そのもので、核兵器の非人道性を訴えています。

 

 核兵器禁止条約は、その前文において「全廃こそがいかなる状況においても核兵器が二度と使

われないことを保証する唯一の方法である。」と記しています。この前文のメッセージを真蟄に受

け止めてください。原爆小頭症の子どもと家族の悲劇を繰り返さないために、核兵器禁止条約が

実効性を伴うものとなることを心から願います。

 

      2021年1月22日

                   きのこ会(原爆小頭症被爆者と家族の会)

                           会 長  長 岡 義 夫


■MediaNEWS  (20.2.7)  関連資料

植村札幌控訴審 

司法の歪みここまで  不当判決に抗議
 日本ジャーナリスト会議声明
 
   韓国で初めて名乗り出た従軍慰安婦の証言を1991年に記事にした元朝日新聞記者植村隆さんが、自身を「捏造」記者と攻撃した櫻井よしこ氏と週刊新潮、週刊ダイヤモンド、月刊WiLLを発行するワックの出版3社を訴え、名誉回復を求めた植村訴訟控訴審で札幌高裁(冨田一彦裁判長)は2月6日、植村さんの訴えを退ける不当判決を言い渡した。
 植村さんへのいわれのないバッシングは記事執筆から四半世紀後の2014年、朝日新聞が「韓国・済州島で慰安婦狩りをした」との吉田清治証言関係記事を「誤報」として取り消したことから巻き起こった。櫻井氏らはこれを「朝日新聞が慰安婦問題を捏造した」とすり替え、「慰安婦問題はなかった」と歴史的事実をゆがめ、歴史認識を書き変える手段として植村さんへの個人攻撃を展開した。その結果、植村さんは「慰安婦問題捏造記者」とレッテルを貼られ「家族を殺す」などの脅迫をはじめとする卑劣な攻撃にさらされて本件提訴に至った。
 だが、櫻井氏らの主張は真実か。慰安婦についての日本政府の公式定義は「いわゆる『従軍慰安婦』とは、かつての戦争の時代に、一定期間日本軍の慰安所等に集められ、将兵に性的な奉仕を強いられた女性たちのこと」であり、慰安婦犠牲者は日本軍に「性的慰安」の奉仕を強制され、被害と苦痛を訴える人々である。だからこそ日本政府は被害者に橋本龍太郎、小渕恵三、森喜朗、小泉純一郎の各総理大臣が署名した手紙を送り、「おわびと反省の気持ち」を表明したのである。一方、櫻井氏らは2007年、米紙ワシントン・ポストに「日本軍に配置された『慰安婦』は『性奴隷』でなく公娼制度の下で働いていた『売春婦』だ」との意見広告を掲載している。もちろん櫻井氏らがそういう意見を持つのは「自由」だが、裁判所が国の公式見解も歴史認識も踏まえず、名誉棄損の法理すら無視した「真実相当性」の認定で櫻井氏らを免責するのは根本的な誤りであり、司法の歪みと言わざるをえない。
     このような判決がまかり通れば、言論の自由、ジャーナリズムはおろか日本の民主主義が死滅する。札幌高裁の不当判決に強く抗議するとともに、日本ジャーナリスト会議は今後も植村さんを支援し、歴史修正主義と闘っていく。

                          2020年2月7日
                                                                                                                                 日本ジャーナリスト会議(JCJ)

 

■MediaNEWS  (19.8.6)  関連資料

         「嫌韓」あおり報道はやめよう

                      2019年9月6日

                             日本新聞労働組合連合(新聞労連)
                                 中央執行委員長 南 彰

 他国への憎悪や差別をあおる報道をやめよう。
 国籍や民族などの属性を一括りにして、「病気」や「犯罪者」といったレッテルを貼る差別主義者に手を貸すのはもうやめよう。

 先月末、テレビの情報番組で、コメンテーターの大学教授が「路上で日本人の女性観光客を襲うなんていうのは、世界で韓国しかありませんよ」と発言した。他の出演者が注意したにもかかわらず、韓国に「反日」のレッテルを貼りながら、「日本男子も韓国女性が入ってきたら暴行しないといかん」などと訴える姿が放映され続けた。憎悪や犯罪を助長した番組の映像はいまもなお、ネット上で拡散されている。

 今月に入っても、大手週刊誌が「怒りを抑えられない韓国人という病理」という特集を組んだ。批判を浴び、編集部が「お詫びするとともに、他のご意見と合わせ、真摯に受け止めて参ります」と弁明したが、正面から非を認めることを避けている。新聞も他人事ではない。日韓対立の時流に乗ろうと、「厄介な隣人にサヨウナラ 韓国なんて要らない」という扇情的な見出しがつけられたこの週刊誌の広告が掲載されるなど、記事や広告、読者投稿のあり方が問われている。

 日韓対立の背景には、過去の過ちや複雑な歴史的経緯がある。それにもかかわらず、政府は、自らの正当性を主張するための情報発信に躍起だ。政府の主張の問題点や弱点に触れようとすると、「国益を害するのか」「反日か」と牽制する政治家や役人もいる。

 でも、押し込まれないようにしよう。
「国益」や「ナショナリズム」が幅をきかせ、真実を伝える報道が封じられた末に、悲惨な結果を招いた戦前の過ちを繰り返してはならない。そして、時流に抗うどころか、商業主義でナショナリズムをあおり立てていった報道の罪を忘れてはならない。

 私たちの社会はいま、観光や労働の目的で多くの外国籍の人が訪れたり、移り住んだりする状況が加速している。また、来年にはオリンピック・パラリンピックが開催され、日本社会の成熟度や価値観に国際社会の注目が集まる。排外的な言説や偏狭なナショナリズムは、私たちの社会の可能性を確実に奪うものであり、それを食い止めることが報道機関の責任だ。

 今こそ、「嫌韓」あおり報道と決別しよう。
 報道機関の中には、時流に抗い、倫理観や責任感を持って報道しようと努力している人がいる。新聞労連はそうした仲間を全力で応援する。


■MediaNEWS  (19.8.3)  関連資料

 

「表現の不自由展」が続けられる社会を取り戻そう
                                2019年8月4日
                            日本マスコミ文化情報労組会議

 国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」がわずか3日間で展示中止に追い込まれました。展示中の慰安婦を表現した少女像などをめぐり、河村たかし・名古屋市長が展示中止を求める抗議文を大村秀章・愛知県知事(芸術祭実行委員会会長)に提出。日本政府も補助金交付決定にあたり内容を精査する考えを示すなか、主催者の事務局にテロ予告や脅迫・抗議の電話・メールなどが殺到した末の判断でした。
 行政が展覧会の内容に口を出し、意に沿わない表現を排除することになれば、事実上の「検閲」にあたります。メディア・文化・情報関連の労働組合で組織する私たちは、民主主義社会を支える「表現の自由」や「知る権利」を脅かす名古屋市長らの言動に抗議し、撤回を求めます。
 中止に追い込まれた企画展は、日本社会で近年、各地で表現の場を奪われた作品を集め、なぜそのようなことが起きたのかを一緒に考える展示でした。河村市長は、国際芸術祭の開催に税金が使われていることを理由に、「あたかも日本国全体がこれ(少女像)を認めたように見える」と述べていますが、行政は本来、「表現の自由」の多様性を担保する立場です。公権力が個々の表現内容の評価に踏み込んでいけば、社会から「表現の自由」や「言論の自由」は失われてしまいます。
 国際芸術祭の津田大介監督は開会前、「感情を揺さぶるのが芸術なのに、『誰かの感情を害する』という理由で、自由な表現が制限されるケースが増えている。政治的な主張をする企画展ではない。実物を見て、それぞれが判断する場を提供したい」と狙いを語っていました。日本社会の「表現の自由」の指標となる企画展が潰された事態を、私たちは非常に憂慮しています。また、民主主義社会をむしばむ卑劣なテロ予告や脅迫を非難しない政治家たちの姿勢も問題です。
 実物を見て、一人一人が主体的に判断できる環境をつくるのが筋だと考えます。
 私たちは企画展のメンバーや将来を担う表現者たちと連帯し、多様な表現・意見に寛容で、「表現の不自由展」を続けられる社会を取り戻すことを目指します。
                       

                     日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)
              (新聞労連、民放労連、出版労連、全印総連、映演労連、

               映演共闘、広告労協、音楽ユニオン、電算労)

 


■「MediaNEWS」 (19.5.18) 関連資料

 

                                      2019年5月17日
改正小型無人機等飛行禁止法の成立に対する
井口哲也日本新聞協会編集委員会代表幹事の談話

 

 日本新聞協会は本日、改正小型無人機等飛行禁止法が参議院本会議で可決、成立したことを受け、井口哲也・編集委員会代表幹事の談話を発表した。

 

 小型無人機(ドローン)の規制強化は取材活動を大きく制限し、国民の知る権利を著しく侵害するものであり、当協会の反対にもかかわらず改正案が成立したことは極めて遺憾である。衆参両院の内閣委員会は付帯決議により、国民の知る権利と取材・報道の自由を損なうことのないよう、慎重かつ合理的な運用を政府に求めた。当協会としても、必要な限度を超える規制とならないよう、政府における法の運用を注視していく。                                                                                                                                       以  上

 

「嫌韓」あおり報道はやめよう

2019年9月6日
日本新聞労働組合連合(新聞労連)
中央執行委員長 南 彰


 他国への憎悪や差別をあおる報道をやめよう。
 国籍や民族などの属性を一括りにして、「病気」や「犯罪者」といったレッテルを貼る差別主義者に手を貸すのはもうやめよう。

 先月末、テレビの情報番組で、コメンテーターの大学教授が「路上で日本人の女性観光客を襲うなんていうのは、世界で韓国しかありませんよ」と発言した。他の出演者が注意したにもかかわらず、韓国に「反日」のレッテルを貼りながら、「日本男子も韓国女性が入ってきたら暴行しないといかん」などと訴える姿が放映され続けた。憎悪や犯罪を助長した番組の映像はいまもなお、ネット上で拡散されている。

 今月に入っても、大手週刊誌が「怒りを抑えられない韓国人という病理」という特集を組んだ。批判を浴び、編集部が「お詫びするとともに、他のご意見と合わせ、真摯に受け止めて参ります」と弁明したが、正面から非を認めることを避けている。新聞も他人事ではない。日韓対立の時流に乗ろうと、「厄介な隣人にサヨウナラ 韓国なんて要らない」という扇情的な見出しがつけられたこの週刊誌の広告が掲載されるなど、記事や広告、読者投稿のあり方が問われている。

 日韓対立の背景には、過去の過ちや複雑な歴史的経緯がある。それにもかかわらず、政府は、自らの正当性を主張するための情報発信に躍起だ。政府の主張の問題点や弱点に触れようとすると、「国益を害するのか」「反日か」と牽制する政治家や役人もいる。

 でも、押し込まれないようにしよう。
「国益」や「ナショナリズム」が幅をきかせ、真実を伝える報道が封じられた末に、悲惨な結果を招いた戦前の過ちを繰り返してはならない。そして、時流に抗うどころか、商業主義でナショナリズムをあおり立てていった報道の罪を忘れてはならない。

 私たちの社会はいま、観光や労働の目的で多くの外国籍の人が訪れたり、移り住んだりする状況が加速している。また、来年にはオリンピック・パラリンピックが開催され、日本社会の成熟度や価値観に国際社会の注目が集まる。排外的な言説や偏狭なナショナリズムは、私たちの社会の可能性を確実に奪うものであり、それを食い止めることが報道機関の責任だ。

 今こそ、「嫌韓」あおり報道と決別しよう。
 報道機関の中には、時流に抗い、倫理観や責任感を持って報道しようと努力している人がいる。新聞労連はそうした仲間を全力で応援する。


■「ホーム/新着情報」ページ(19.2.26)  関連資料 

   WⅰMN (メディアで働く 女性ネットワーク声明 

  (2019年2月25日)

 

安倍晋三内閣は2月15日、菅義偉官房長官の記者会見における東京新聞の「特定の記者」の質問について「誤った事実認識に基づくものと考えられる」「国内外の幅広い層の方々の事実認識を誤らせることにもなりかねず、ひいては、定例会見を行う意義が損なわれるおそれがあるとの問題意識を有している」とする政府答弁書を閣議決定しました。
この閣議決定は、政府によるジャーナリストへの弾圧、言論統制そのものであり「特定の記者」を超えて、ジャーナリスト一人一人に向けられた「刃」です。
さらには、言論・表現の自由や「市民の知る権利」に対する重大な冒涜・侵害であり、到底看過することはできません。安倍首相と菅官房長官および閣議決定に署名した各閣僚に対して厳重に抗議し、撤回を求めます。

官房長官会見において「特定の記者」は約1年半、質問する順番を後回しにされ、質問中には数秒おきに何度も「簡潔にお願いします」などと言われて制止され、妨害されてきました。2月15日の閣議決定では、一連の質問制限・妨害を正当化し、今後も「ある」と宣言しています。
菅官房長官はこの記者の質問内容に「事実誤認」があるとして「9回の申し入れを行った」ことを明らかにし「度重なる問題行為」という見解を示しました。
昨年12月28日には「特定の記者」について、質問が「事実誤認」「度重なる問題行為」であるとする「問題意識の共有をお願い申し上げる」との「申し入れ」を内閣記者会の掲示板に貼り出すなどして、記者会全体にアピールしました。特定の記者をつるしあげ、その排除に記者クラブを加担させようとしているようにみえます。

質問を妨害すること、質問内容を「事実誤認」とみなして一方的な申し入れを執拗に繰り返すことは、権力者が特定の記者の弾圧と排除を意図した行為と評価せざるを得ません。質問内容にまで政府見解の枠をはめようとするものであり、この記者の質問は間違っているとあらかじめ決めてかかって質問をさせないなどという行為は断じて許されません。
その行為を正当化し、今後も「ある」と言明することは、脅迫に等しい効果を持ちます。記者クラブに対する申し入れに至っては、「特定記者」を超えて、権力を監視する報道機関全体に対する圧力であり、不当な支配・介入です。官邸の意向がどうあれ、ジャーナリズム活動の萎縮を結果しかねません。

こうした安倍政権の一連の対応の根底には「表現の自由」や「知る権利」に対する無知・無理解があり、主権者である市民の権利を軽んじる見方があります。
国の政治や行政は、市民から集めた税金によって成り立ち、市民の負託を受けて進められています。市民にはその行政の行為をしっかりとチェックし、コントロールする権利があり、その権利は誰からも制限されることなく行使できなければなりません。

ジャーナリズム活動の根拠はそこにあります。

記者たちは政治や行政の動向について、不明なことや隠されていることを詳らかにし、意思決定の過程や手続きの妥当性、その効果や結果を含めて、市民に情報を提供する。記者会見もその活動の重要な一部です。
逆に言えば、政府や自治体といった公共機関は、記者会見を含めたあらゆる場で、市民に対して説明の責任を果たさなければなりません。
質問内容に対する「事実誤認」のレッテルを貼って質問を妨害することは、国民の知る権利にこたえようとする記者の活動を根底から覆し、市民に背を向ける行為にほかなりません。

安倍政権の一連の対応は「政府が問題あると見なしたジャーナリストは、取材・報道の自由を制限してもよい」という誤った認識に基づいています。
過去にあった新聞紙法、記者登録制度による政府の言論統制を彷彿とさせる行為です。戦時中の日本においては、こうした制度のもとでジャーナリズムが死滅し、大本営発表一色に染まって、内外に取り返しのつかない犠牲を生みました。同じ過ちを繰り返してはなりません。

安倍政権はジャーナリズムに対する誤った認識を改め、直ちに記者に対する弾圧・排除をやめ、記者会見を正常化するよう、強く求めます。

  2019年2月25日

          メディアで働く女性ネットワーク(WiMN)代表世話人 林美子・松元千枝


MIC (マスコミ労組会議)も声明を発表
首相官邸の質問制限・妨害行為

記者に対するハラスメント

抗議する

                                 2019年2月18日
               日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)
                  (新聞労連、民放労連、出版労連、全印総連、映演労連、
                   映演共闘、広告労協、音楽ユニオン、電算労)

 安倍内閣は2月15日、菅義偉官房長官の記者会見における東京新聞の「特定の記者」の質問について、「誤った事実認識に基づくものと考えられる質問」と一方的に断定し、「国内外の幅広い層の方々の事実認識を誤らせることにもなりかねず、ひいては、定例会見を行う意義が損なわれるおそれがあるとの問題意識を有している」とする政府答弁書を閣議決定しました。
 記者会見は、記者が国民・市民を代表して様々な角度から質問をぶつけ、為政者の見解を問いただすことによって、国民・市民の「知る権利」を保障する場です。それにもかかわらず、記者の質問内容にまで政府見解の枠をはめようとする今回の閣議決定は、「取材の自由」や全ての国民・市民の「知る権利」の侵害であり、断じて容認することはできません。首相官邸および閣議決定に署名した各閣僚に対し、厳重に抗議し、撤回を求めます。
 首相官邸は、沖縄県名護市辺野古での米軍新基地建設をめぐり、「埋め立て現場ではいま、赤土が広がっております」と東京新聞記者が質問したことについて、「表現は適切ではない」「事実に反する」と主張し、その質問を「事実誤認」「問題行為」と断じています。しかし、赤土が広がっていることは現場の状況を見れば明白であり、記者が記者会見で質問することは自然な行為です。問題発覚後に沖縄県が求めている土砂に関する立ち入り調査に沖縄防衛局などが応じていないことも事実です。首相官邸の主張は、問題発覚前に行われた調査とすり替えて、意に沿わない記者に「事実誤認」のレッテルを貼る卑劣な行為です。
 また、首相官邸は、「事実誤認」を理由に「9回の申し入れを行った」(菅官房長官)と国会などで答弁し、「度重なる問題行為」を印象づけようとしています。しかし、たとえば国連特別報告者が求めた閣僚との面会が見送られたことについて、東京新聞記者が「ドタキャン」と表現したことは、国際社会の評価に沿ったものです。こうした質問を「事実誤認」としておとしめる行為は、日本政府の国際的信用を失墜させる恐れすらあります。
 記者会見で指名権を持つ菅官房長官は約1年半にわたって、この東京新聞記者の質問を後回しにし、司会役の官邸報道室長は「公務」を理由にこの記者の質問数を1~2問ほどに制約していました。さらには、質問中にもかかわらず、報道室長が数秒おきに「簡潔にお願いします」と妨害し、「質問が長い」と印象づけようとしています。一方的に「事実誤認」のレッテルを貼ることを含めた一連の首相官邸の行為は、権力者による記者に対するハラスメント(いじめ、嫌がらせ)行為です。
 首相官邸は昨年12月28日、この東京新聞記者の質問が「事実誤認」「度重なる問題行為」であるとして、「このような問題意識の共有をお願い申し上げる」とする申し入れを内閣記者会に行いました。新聞労連などがこの申し入れを撤回するよう求めています。事実をねじ曲げ、意に沿わない記者にハラスメント(いじめ、嫌がらせ)を繰り返し、排除しようとする首相官邸の対応が、悪しき前例として日本各地に広まることを危惧しているからです。ところが、政府は2月15日の閣議決定で、一連の質問制限・妨害を正当化し、今後も「ある」と宣言してきました。
 日本では第2次世界大戦中、政府が新聞事業令を施行するなど、報道機関や記者の統制を計画し、準統制団体である日本新聞会を設置させるなど、自由な報道や取材活動を大きく制限しました。この結果、報道はいわゆる「大本営発表」に染まり、取り返しのつかない数の死傷者を出しました。二度と同じ過ちを繰り返してはなりません。
 マスコミ・文化・情報の職場で働く私たちは、言論・表現・報道の自由を守るため、首相官邸に対して、不公正な記者会見のあり方をただちに改め、記者に対するハラスメント(いじめ、嫌がらせ)をやめるよう、強く求めます。                            以 上

                                      (19.2.26)


■「ホーム/新着情報」のページ。18.10.26関連 広島市に提出の「質問状兼請願書」と市の「回答書」