コラム言いたい 問いたい 伝えたい】

 いま自民党政権を倒さないで、いつ倒すのか?

    2つの市長選の結果が示したもの

    2月4日投開票の京都市長選に注目した。自民党派閥の政治資金パーティーによる裏金問題が投票結果にどう影響するか。投票6日前の読売新聞は「自民、立憲民主、公明、国民民主の4党が推薦する元内閣官房副長官の松井孝治氏(63)と、共産党が推薦する弁護士の福山和人氏(62)が横一線で競り合い」と書き、世論調査で「自民派閥による政治資金規正法違反事件を投票の判断材料にするかを尋ねたところ、『する』が51%、『しない』が44%」だった、と報じたからである。

 与野党4党対共産1党の構図で、結果は、松井氏17万7454票、福山氏16万1203票。投票率は41・67%で、前回・4年前の選挙より0・96ポイント高かった。

 

 同じ4日に投開票されたもう一つの市長選挙の結果にも触れておきたい。群馬県の県都・前橋市。こちらは、はっきりした与野党対決の構図で、無所属新人で立憲、共産など野党側が支援した小川昌氏(41)が、自民党と公明党が推薦した現職の山本龍氏(64)を破った。6万486票対4万6387票。投票率は39・39%で、前回・4年前を3・77ポイント下回った。

 群馬と言えば、福田赳夫、中曽根康弘、小渕恵三、福田康夫という4人の総理大臣を輩出し、県内選出の国会議員は、衆院5選挙区、参議院の2議席すべてを自民が独占する〝保守王国〟である。

 

 これら首長選挙の結果をどう見るか。私は、自民に対する立憲の立ち位置に注目した。今後の分析や動向を見守りたい。 

 

 「幕引き」ありえない。派閥「解散」も効果なし

 「裏金問題の『幕引き』と派閥『解散』」をテーマにした出稿を依頼された。その後の経過も踏まえると、「幕引き」は決してできないだろう。幕引きのために岸田文雄首相が仕掛けた「派閥解散」は、表明した途端、「これは目くらましだ」と多くの市民から見透かされた。

 

 2月5日付の中国新聞が、3、4両日に共同通信社が実施した世論調査結果を載せている。裏金の使途について「説明する必要がある」との回答が84・9%に上った。内閣支持率は24・5%で、前回調査(1月13、14両日)を2・8ポイント下回った。岸田内閣としては最低水準だ。裏金事件を受けた党改革中間報告で、自民が「信頼回復できる」は9・7%、「信頼回復できない」は87・0%だった。 

 

 ―  パーティー券事件の真相・深層

 事件の経緯を振り返ってみる。そもそも検察を動かしたのは、「しんぶん赤旗日曜版」の調査報道と、これを受けて自民党の派閥ごとに告発状を作成し、検察庁特捜部に送り続けた上脇博之・神戸学院大教授だ。その上脇教授は「自民党の派閥収支報告書を見て驚くのは、政治資金パーティーが占める割合の多さだ」と語る。

 

 政治資金パーティーとは、世に言うパーティーとはまったく違う。券の購入者は、その場で提供される飲食などに期待するのではなく、最初からお金を寄付するつもりでパーティー券を買う。

 寄付の場合、1年間にその額が計5万円を超えるとそれぞれの寄付額について、いつ誰がいくら出したのか。その明細を提出しなければならない。

 ところが、パーティーだと、この透明度が極端に低くなる。1回のパーティー券購入費が計20万円をこえなければ明細はいらない。個人で政治家を支援したくて2万円の券を1枚、自腹で買う人もいるが、ほとんどは企業とか業界の政治団体がまとめて買うのが通例だ。

 

 そうすれば、こんなやり方がまかり通る。政治家が年に5回パーティーを開き、ある企業に毎回20万円ずつ、計100万円買ってもらったとする。買った会社の名前はどこにも出ないのだから、会社名を書きたくない、書くのがまずい企業は、パーティー券を介して政治家とウィンウィンの関係がつくれる。寄付だと年間6万円でも名前が出てしまうのに、20万円ずつ分けてパーティー券を買えば、政治家と企業との関係を隠せるのだ。

 

   このようにして巨額の裏金をつくっていた。収支報告義務のない企業団体はどれだけパーティー券を買ったのか闇の中。「だからいまわかっている金額は、『氷山の一角』である可能性が高い」と上脇教授は指摘する。 

 

 ―  これは30年前の「政治改革」の失敗だ

 こんな仕組みはいつできたのか。あらためて考えてみる必要がある。

研究者や評論家のには、30年前の「政治改革」の失敗を指摘する人が多い。1994年に成立した政治改革4法のことだ。小選挙区比例代表並立制と政党助成金の導入を柱とする「政治改革」だ。この「改革」は当時、政党助成金について「国民一人当たりコーヒー一杯分で、きれいな政治が実現する」と喧伝された。実際にはその裏で長年にわたり、自民党組織を挙げて裏金づくりが続いていた。

 

 国会でのやり取りで岸田首相は、浮かび上がった改革の課題について、「真摯な議論」「各党と協議」のフレーズを繰り返すばかりである。「連座制」の導入には口をつむぎ、政策活動費の使途の公開にも慎重で予防線を張るのに懸命だ。問題の根源ともいうべき、企業・団体献金の廃止は真っ向から否定している。 

 

  ― 「政治とカネ」は「政治の〝金持ち支配〟」

   裏金問題に耳目が集まる中、最近、岸田派による新たな疑惑が浮上したのをご存知だろうか。

 

 一つは、『週刊ポスト』2月2日号が報じた「内閣総理大臣を祝う会」が岸田首相の政治資金集めの闇パーティーだったのではないかとの指摘だ。

 発起人には広島県知事、広島商工会議所会頭など地元政財界の有力者11人が名を連ね、会費は1万円。飲食は一切なく、リーガロイヤルホテル広島の会場は満席で約1100人が集まった。この祝う会から岸田首相の政党支部に約322万円がその後寄付されたが、その代表者として名前を記載された人物は「パーティーンには出席したが、寄付など預かり知らんことだ」とコメントしている。

 

 もう一つは、昨年12月に都内のホテルで開く予定だった会費2万円の「岸田文雄と国政を語る会」。裏金疑惑で延期したが中止はせず、「振り込み済みの会費は、日程が決まり次第、延期後の開催分とします」と連絡した(「しんぶん赤旗日曜版」2月4日号)。開催せず返金もしなければ、パーティー券収入は寄付となる。どの企業がいくら購入したのか。報告書で明らかになることを逃れるために、中止ではなく延期にしたのではないか、と国会で追及された。

 首相が、自身のパーティーを中止にせず延期している意味は重い。それはパーティー券購入を含む企業・団体献金の禁止に切り込むつもりがないことを示している。〝やってふり改革〟にすぎないことは明らかだ。

 

 広島でいわゆる「河井疑惑」が発覚して以来、私が考え続けていることがある。「政治とカネ」の問題とは、公職選挙法違反の買収とか、政治資金規正法に違反したカネのやりとか、違法行為に本質があるのではない。背景に「カネで政治を動かす」仕組みがあり、それは「政治の〝金持ち〟支配」につながっている。こんな風土からは、庶民や弱者を救済する政治は生まれない。私たち主権者は、深く自覚する必要がある。 

 

 ―  次は市民の出番だ

   今回明らかになったのは、与党・自民党が組織的に延々と、堂々と、明白な違法行為を繰り返し、隠れ政治資金をつくってきた「構図」である。これだけの構造悪が私たちの眼前に突き付けられたのだ。

 次に問われるのは、私たちの政治への向き合い方である。選挙で政治家を選べる有権者が、この状況をどう改めていくか。野党共闘のあり方を含めて問われている 

                        (難波健治 2月5日 記 反戦情報No473掲載)

                                                                                                                                        (  2024.3.2) 


 自民党の政治資金パーティー裏金づくり

   〜今こそ本質に迫る報道を!〜

 

 自民党派閥の政治資金パーティーをめぐる裏金づくりは、20年以上前から自民党の組織的な犯罪として行われていたことが明らかになりつつあります。そして今、所得納税の確定申告を迎え、国民の批判は日に日に大きくなっているようです。「河井疑惑をただす会」が2月17日に広島市内で開いた学習交流会には、マスコミも注目している上脇博之神戸学院大教授の講演ということもあって、150人(オンラインを含む)を超える参加がありました。

 

 学習会では、リクルート事件や佐川急便・金丸事件など金権腐敗政治への国民の怒りを逆手にとり、「政治改革」の名のもとで選挙制度の問題にすり替えて小選挙区制と政党助成金の導入などを図る「政治改革4法案」が成立、これが今問題となっているパーティー裏金づくりの大本になっていることが明らかにされました。

 政治資金規正法では政治家個人への寄付を禁止する一方で、政党が政治家(自民党では幹事長ら幹部)に寄付する場合は「合法」になっている、つまり「抜け穴」がつくられ「合法的な裏金」づくりに道が開かれ、それが選挙買収の資金に使われてきたという構図が浮かび上がってきたのです。

 また、政治に対する民意を歪める大本になったのが小選挙区制です。鳩山一郎内閣の「ハトマンダー」、田中角栄内閣の「カクマンダー」と、「4割の得票で7割の議席」が得られる小選挙区制の導入は民主主義を否定するものとして、その度に国民的な大運動で阻止してきました。これに新聞労連やマスコミ共闘が大きな役割を果たしてきたことも歴史的な事実です。

 その経験から自民党は、政治に金がかかるのは中選挙区に原因があるとマスコミを使って、「政治改革=小選挙区制」のキャンペーンを展開しました。当時、広島選出の宮沢喜一首相と懇意だった山本朗中国新聞社長は都道府県選挙管理委員会連合会長として第8次選挙制度審議会の委員に選出され、この審議会が小選挙区比例代表並立制を答申しました。山本社長は当時の新聞協会副会長でもありました。

 

 河井大規模買収事件での中国新聞の報道は、新聞協会賞は逃したものの、その後に新聞労連ジャーナリズム大賞を受賞するなど目を見張ります。被買収議員らの裁判の様子も克明に伝え続けてくれています。この「政治とカネ」をめぐる一連の報道によって、選挙買収の立件はこれまで選挙中やその直前でしたが、3カ月も前の統一地方選までさかのぼらせました。さらには、モチ代・氷代、当選祝い・陣中見舞いといった名目ではなく、当選させる意図があったかどうかの判断を判決に反映させました。

 「河井疑惑をただす会」では河井夫妻や被買収者100人の刑事告発、街頭宣伝や署名活動などに取り組み、それが報道されることで一層頑張れるという相乗作用があったと思っています。今の裏金問題でも自民党の派閥解消という目くらましに惑わされることなく、その狙いをとことん暴き、政治倫理審査会の開催で幕引きを許さず、徹底解明とあわせて、根本の小選挙区制や政党助成金など選挙制度の見直しへと踏み込む報道を大いに期待しています。                     (山根岩男)

                                   (2024.3.2) 


   黙っていてはいけない 

  〜2024年の年頭にあたって思うこと~

 

  岸田首相は、大軍拡路線に大きく舵を切った。これは、安倍政権時代から続く「戦争する国づくり」の流れを受け継いだものではあるが、明らかにそれとは区別されるべき画期的な段階に入ったことを示している。日米同盟はいま、文字通り臨戦態勢づくりにまい進している。すでに日本は、米国とともに戦争する環境づくり(違憲の戦争法体系整備)を終え、日米一体で戦争を遂行する実戦レベルに突入した。岸田政権は、自衛隊の核武装(=日米「核共有」)さえも視野に入れている、と見るべきだ。

 岸田首相が、今回の安全保障政策の大転換にあたり、口癖のように語ったのが「日本を取り巻く安全保障環境の激変に対応する」というフレーズである。

 

 しかし私たちは、いまある現実の「来し方」と「行く末」をしっかり見極めなければならない。私たちを取り巻く、現在の安全保障環境は、誰が、どのようにしてつくってきたのか。それは「外」から変わったのか。この場合の「外」とは、「国外」という意味だが、国名を挙げれば、中国やロシア、北朝鮮、イランなど(米国に同調せず、いわゆる「反米」の立場をとる国々)を指すのか。それとも、自らの国を、公式文書「国家安全保障戦略」(2022年10月発表)の中で「グローバルパワー」と言い切る唯一の国、米国のことと見るか。 

 「内」とはもちろん「日本という国」の内側を指している。冒頭に書いた岸田政権の「臨戦態勢にまい進する大軍拡路線」への転換は、私たち主権者の意思に基づくものなのか。であれば、主権者に対する十分な説明と国民規模での議論を踏まえてなされたか。それとも「世界の覇者」を自認する米国の意向を受け、指示されるままに、むしろ国民の目から隠れるようにして舵を切ってしまったということか。

 だとすれば、岸田政権の防衛政策そのものが、東アジアの軍事的緊張を高めている側面はないのか。日本国憲法の前文と九条のもとにある国が、そのような状態に陥っていることを、私たちは黙認していいのだろうか。そもそもそのような国づくりは、私たちの日々の暮らしをどこに導こうとしているのだろうか。

 このことを考えると、じっとしてはおれない。とにかく、黙っていてはいけない。

 G7サミットが広島で開かれた2023年。この1年の間に、私たちが住む広島では、被爆地のありようとして考えられないような出来事が相次いだ。

 春には、広島市教育委員会が作成した平和教材から「はだしのゲン」が消えた。「第五福竜丸事件」も削除された。これらと入れ替わるように、原爆投下を赦(ゆる)して「未来志向の和解」を呼びかける、亡き被爆者の「声」なるものが大々的に掲載された(これは亡き被爆者ご本人の文章ではなく、米国在住の娘さんの手になる「声」である)。米国ハワイ州の真珠湾にあるいくつかの戦勝記念施設と広島の平和記念公園が、あまりにも唐突に姉妹協定を結んだ。この締結をめぐり米国の原爆投下責任を「棚上げ」するという市幹部の答弁まで市議会で飛び出した。市長が了解したうえでの発言だった。12月に入ると、その松井一実市長が新規採用職員研修に教育勅語を使っていることもわかった。

 これら一連のできごとは、どこかでつながっているように思えてならない。核兵器廃絶とも戦争反対・平和の実現とも似ても似つかぬこれらの動きは、いったいどこから生まれてきたのか。

 

 「専制主義」に対抗するとして、「自由と民主主義」「法治主義」を標榜する主要7カ国の首脳が広島に集ったG7広島サミット(5月19~21日)とはいったい何だったのか。広島の冠をつけて初日に発せられた「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」には、G7が核抑止政策を取り続けることを正当化する理由が明記された。前年から続く戦争の一方の当事国であるウクライナのゼレンスキー大統領が電撃的に訪れ、会議に参加した。G7広島サミットは結局、核抑止を唱える核保有国の「核の傘」のもとで戦争をあおるような会議になってしまったのではないか。核抑止と、ウクライナへの武器供与を決める場として、広島が「貸し座席」に利用されたのではないか。

 しかも、主要7カ国とEUは、5カ月後に起きたパレスチナ・ガザ地区での戦争で、一貫してイスラエルを支持・支援する立場に立っていることを私たちは決して見逃してはならない。

 

 いま世界で起きている動きに、大いなる疑問を禁じ得ない。だから、私たちは、黙ってはいけない。

 

 核抑止論を正当化した「広島ビジョン」には、被爆者をはじめ多くの市民が抗議の声を上げた。8月6日の平和宣言で広島市長は「核抑止論は破綻した」と明言した。カナダ在住の被爆者、サーロ―節子さん(91)は「声を上げた市民の力を感じた」と記者会見で語った。

 

 やはり私たちは、黙っていてはいけない。

 自らの身のまわりで起きていることにしっかり目を向け、疑問を抱いたらそれを問いただす声を。

 思わず拍手したいような出来事には共感と連帯の声を。

 ささやかであっても、自分で考えた言葉を発しようではないか。

 

 ウクライナやガザでの武力衝突が続くなか、戦争や核兵器について私たちが考え、語り合う機会も増えてきた。決して無関心であってはならない。

 語り合う。声を上げる。ただ、それだけでいい。そのことを、静かに胸に秘めて、動こう。

 いま、広島で起きていることを世界の動きと結び付けて考えよう。        (難波健治)

                                  (2024.1.12)

 


 姉妹公園協定 「未来志向」と言うのなら

 

    広島市の平和記念公園と米国ハワイ州の「パールハーバー国立記念公園」の姉妹公園協定が6月29日、松井一実市長がアメリカ大使館へ出向いて結ばれました。これには平和公園で修学旅行生らに原爆被害や平和への願いを伝える広島県原爆被害者団体協議会のガイドをしている私には、何で今?と疑問を持つと同時に、何か裏があるのではないかと勘ぐりたくなります。というのも、米国が平和公園の象徴である「原爆ドーム」の世界遺産登録に反対しているからです。

    原爆ドームが宮島の厳島神社と同時に世界遺産に登録されたのが1996年。反対した国が2つありました。米国と中国です。中国は、広島が甚大な被害にあったことは分かるが、中国も日本軍による侵略で多くの人々が殺された。日本の戦争加害を否定する人々に利用されるのを危惧し、最終的には棄権したと言われています。

    一方、米国はどうでしょう。「戦争を早く終わらせるために原爆投下は必要だった」「原爆投下によって米同盟軍兵士25万人、日本人25万人の命が救われた(あるいは100万人)」と正当化し続けています。世界遺産の登録にあたっては、調査報告書から「世界で初めて使用された核兵器」との文言を削除させているのです。

 「リメンバー・パールハーバー」は復讐・戦意をかき立てるスローガンでした。真珠湾攻撃と、「戦争終結のため」と米側が主張し続ける原爆投下の地との姉妹公園協定は、戦争の「始まり」と「終わり」を同列に並べて、原爆投下は報復であり「正しかった」とされることになりかねません。

    被団協のガイドで広島市の国際化推進課に申し入れた時、「米国に対して世界遺産登録に賛成するよう働きかけはしないのですか」と質すと、「その考えは全くありません」と即答し、姉妹協定は「未来志向」と強調するばかりで、具体的に何をしようとしているのかは全く示しませんでした。

 加害者と被害者がいつまでも憎しみ合うのは決して好ましいことではありませんが、真の和解は加害の事実に向き合い、謝罪・反省してこそ実現されるのではないでしょうか。『軍都廣島』増補版(一粒の麦社)に橋本和正さんが、廣島第五師団のマレー半島侵攻で、現地の反日分子掃討作戦で華僑虐殺にかかわりBC級戦犯として処刑された叔父の事件を紹介しています。

 「未来志向」と強調するなら、シンガポールの「戦争記念館」との姉妹協定を考えてみてはどうでしょうか。広島市の「国際化推進課」が「アメリカ化推進課」になりはしないかと心配です。(山根岩男)

                                                                                                                                          (2023.8.29)


  放射能汚染水の海洋放出に反対します

 

 共同通信社が14~16日に実施した全国電話世論調査によると、東京電力福島第1原発処理水の海洋放出に関する政府の説明について「不十分だ」との回答が80.3%に達した。マイナンバーカードの問題をめぐり、政府が秋までに実施する総点検で「解決しない」との答えは74.7%に上った。内閣支持率は34.3%で6月17、18両日の前回調査から6.5ポイント下落し、岸田内閣で最低水準となった。不支持率は7.0ポイント増の48.6%だった。

    中国新聞の7月17日付朝刊1面トップ記事である。記事によると、処理水放出で風評被害が起きると思うかを聞くと「大きな被害が起きる」が15.8%、「ある程度起きる」は71.6%で懸念する声が計87.4%を占めた。政府の説明が「十分だ」との回答は16.1%。放出は賛成31.3%、反対25.6%と割れ、どちらとも言えないが43.1%だった。

    私は「処理水」とは言わずに「汚染水」と言う。処理というと安全な印象を与えてしまう。放射能を持つトリチウムは除去できないため、水で薄めて国際基準より低くして流す。しかし、世界最悪の事故を起こした福島原発は、廃炉の目途もたっていないため、この先何十年も、ひょっとしたら何百年も汚染水を流し続けることになる。安全であるとなぜ評価できるのだろう。世論の8割が政府説明が不十分と思っているのも当然である。

    ゴジラは、みなさんもご承知のように南太平洋の核実験によって変異した古代生物という設定だ。世界に衝撃を与えた映画をつくった日本が、汚染水を海に流す愚行をなぜするのか。海でつながる中国、韓国などアジア諸国が強く反対するのは、当然だろう。先日、米国の核実験被害で今も苦しむマーシャル諸島の女性に会ったが、汚染水で海を汚さないでほしいと強く訴えていた。

    ただ、この世論調査で、処理水の海洋放出そのものには賛成と反対が割れ、どちらとも言えないが4割もあるのは、私には悲しい。処理水ではなく汚染水と表記すれば反対が圧倒的になると思う。「放射能汚染処理水」としても印象はずいぶんと違う。役人たちがつくる言葉を安易に使わないようにメディアに求めたい。アジア・太平洋戦争で「全滅」を「玉砕」に、「敗退」を「転進」と言い換えて、国民にウソ情報を流し続けたことを、忘れないようにしよう。

    それにしても、岸田内閣の支持率低下が止まらない。G7広島サミットでバイデン大統領らと平和公園で記念撮影した頃をピークに、あっという間に3割ぎりぎりのところまで落ちてしまった。国民は、岸田首相の存在が不安なのではないか。原発汚染水にしてもマイナンバーカードにしても少子化対策、防衛費倍増・敵基地攻撃などなど、日本の命運を左右する課題が目白押しなのに、岸田首相からは、一生懸命考え、行動しているという本気度が私には伝わってこない。みなさんもそう感じておられるのではないか。広島選出の首相と言われるのが、私は恥ずかしい。                                                           (藤元康之)

                                                                                                                                        (2023.7.19)


「戦時体制」づくりの実験ではないか?

 

 「新しい戦前」どころか、もはや「戦時下」ではないかと思えるありさまです。

    Jアラートのサイレン音が鳴り響き避難を呼びかけるアナウンスが流れると、屋外にいた人々はこぞって地下街に駆け込み、交通機関が一斉にストップし地下鉄の駅ホームは一時、通勤・通学客であふれかえりました。つい先日朝の北海道の光景は、空襲警報が鳴るとただちに家族みんなで防空壕に避難し身を寄せ合って潜んだ戦時中の日本を彷彿とさせるものでした。

 翻って今、広島で起きていることを見ると、その思いはなおさら強くなります。5月に当地である先進7カ国首脳会議(G7サミット)のため、各国首脳らが滞在したり、訪れたりする場所への立ち入りは制限され、移動する道路も一定時間通行止めになるなど大規模な交通規制が予定されています。例えば、首脳をはじめ各国要人らの訪問が想定されている平和記念公園は18日正午から21日まで立ち入りができなくなり、原爆資料館も休館になります。7年前に当時のオバマ米大統領が来訪した折の規制は当日の午後5時間程度だったと記憶しているだけに、この尋常でない長時間の厳戒態勢には違和感を通り越して脅威を覚えざるを得ません。

 それにもまして驚いたのは宮島の入島制限です。なんと18日から3日間、一般の観光客らが宮島へ入るのは許されなくなります。もちろん厳島神社も一般の参拝客は受け入れず、周辺の観光施設も休業となります。島内の旅館も休業し、予約していた宿泊客も旅館側からキャンセルしているそうです。しかも、その休業補償はされないとのこと。宮島で首脳らの会議が予定されているわけではないのに、どうしてそこまでする必要があるの? 聞けば、首脳らが厳島神社を見学に訪れ、能舞台で能か狂言を観るようだといった話が流れています。いったい誰が、どのような権限に基づいてこんなことができるのか、法的根拠はどこにあるのでしょうか。報道によると、広島県や市、経済団体など官民でつくる広島サミット県民会議の求めに廿日市市が応じてこの措置を決めたというのですが、背後に政府の意向が働いていると誰しも考えるのではありませんか。権力者の一存でとまでは言わないけれど、政府や自治体が恣意的にそんなことをするのは決して承服できません。

 サミット期間中の交通規制に伴って広島市内の学校(小中高)の休校や企業の休業、出社人数の削減、飲食店の営業休止といった動きも広がっています。「ロックダウン」まではいかないにせよ、ふだんの賑わいは失せ、ヒロシマは半分眠ったような街になるでしょう。それがG7の首脳や同行のスタッフらはもとより、来訪する各国のメディア関係者らの目にどう映るでしょうか。

 先には広島湾で日米合同軍事演習が行われるということもありました。そんなこんなを重ね合わせると、今、軍事体制づくりの“実験”が着々と進められていると考えるのは穿ちすぎでしょうか!                    

                                       (井上俊逸)

                                   (23.4.24)


 河井疑惑まだ終わっていない  

  被買収議員は立候補するな!

   4年前の参院選をめぐる河井克行元法相・案里夫妻による大規模買収事件は、まだ終わっていません。夫妻は有罪が確定し、妻は当選無効となり参院議員を失職、夫は懲役3年の実刑判決を受けて服役中です。

   検察は、一度はカネをもらった議員ら100人全員を不起訴にしました。市民268人の「不起訴は不当」の審査請求に対し、検察審査会が35人を「起訴相当」と議決し、とりわけ公職についている首長・県議・市議らの政治的・道義的責任を厳しく指摘していることは重要です。

    これを受けて検察は昨年3月、罪を認めた25人を略式起訴、否認した県議・市議ら9人を在宅起訴しました。罪を認めない9人の言い訳は、広島市議5人(藤田博之・佐伯区=2回に分け70万円、伊藤昭善・安佐北区=2回に分け50万円、谷口修・安佐南区=50万円、三宅正明・安芸区=2回に分け50万円、木山徳和・中区=30万円)の記者会見に集約されています。

    現金は「“氷代”や“餅代”。選挙期間中は“陣中見舞い”、当選後は“当選祝い”」として受け取ったもので、中元や歳暮、祝いといった一般の社会儀礼と同じようなものだと言わんばかりです。「市民や県民からみると奇異に映るかもしれないが、長年、少なくとも広島県や広島市ではこのような儀礼的な贈呈が行われていた」「罪の意識は微塵もない」と開き直りました。

    裁かれるべきは、この金銭感覚ではないでしょうか。慣行であるなら見直すべきです。しかし昨年3月に起訴されたにもかかわらず、裁判はいまだに開かれず(渡辺典子県議は3月16日に初公判)、選挙後に引き延ばされようとしています。

    日々の暮らしでやりくりに四苦八苦している市民には20万円、30万円の歳暮・中元はありえません。こんな金銭感覚の議員に市民の暮らしは気にもならず、巨額の公共事業の行方や便宜を図ることによるリベートにしか興味がわかないのでしょう。

   この議員たちは辞職もせず、多くが4月の統一地方選に立候補しようとさえしています。もう「政治とカネ」疑惑はうんざりですが、このまま放っておけません。放っておけば、また繰り返されます。今からでも、こんな人たちは「立候補するな」の声を上げましょう。それでも選挙に立候補すれば主権者として投票に行って、厳しい審判を下しましょう。   

                                                                                                (河井疑惑をただす会 共同代表 山根岩男)

                                                                                                                              (23.3.17)

 

【検証】

  平和教育教材からの『はだしのゲン』削除について  

 

    広島市教育委員会は2023年度、市立小中高校での平和教育プログラムを見直すという。小3の教材「ひろしま平和ノート」に掲載の中沢啓治さんの漫画「はだしのゲン」を差し替えることになった(「朝日新聞」2023年2月17日、社会面)。

    漫画は中沢さんが実際に体験したこと、見たことを分身の「ゲン」の目を通して描かれている。言論統制などで民衆を侵略戦争に動員し、なぜ原爆投下されたのかという歴史的社会的背景にも触れている。

検証した有識者の議論で、「児童の生活実態に合わない」などと指摘されているが、戦時下の暮らしと現在の生活とは異なっているのは当然だ。ゲンが「コイを盗む描写は誤解を与える」ともあるが、身重の母親に食べさせようと思うまでに追い込まれた当時の苦しい家庭の実態に思いを馳せたい。「現実はそんなもんじゃない」と語り続けた中沢さんの言葉は重い。

    私は中学校の教員時代に、生徒たちと証言されていない被爆者を捜し、聞き取り調査を重ねていた。20歳の時、建物疎開に動員され、爆心地から1.5キロの鶴見橋で被爆した教え子のおじいさん宅を訪れた。閃光が襲った瞬間、彼の隣の人の顔の皮膚は垂れ下がり、「助けて」の声を聞いたが、比治山を越えて逃げるのに精いっぱいだったと語った。

 漫画を読んでいた生徒も多く、体験談を聞きながら描かれた情景と重なり、一層リアルに被爆者の苦しみや悲惨な実相を受けとめた。生徒の真剣に聞き入る姿に、おじいさんは服を脱いで他人の前で晒したことのない背中のケロイドを見せた。戦後は白血球が減少し、薄氷を踏む思いで過ごされ2014年、89歳でお亡くなりになった。

 「ゲン」は世界20数か国で翻訳されている。国・文化を越えた子どもたちが共感し合い、被爆者に寄り添い反核・平和の「架け橋」になる。ロシアのウクライナ侵攻、核使用の威嚇で核戦争の懸念が世界を覆う中、「ゲン」は時宣を得た作品である。平和教育教材として残してほしい。

                                              2023.2.19 吉川徹忍 (元中学教師)

                                                                                                                                            (23.3.1)

 

  まだ終わらぬ河井事件

  検察は金受け取った議員ら起訴せよ

 

 検察審査会は1月28日、「河井疑惑をただす会」などの被買収者100人の不起訴は不当の申し立てに対して、35人を起訴相当、46人を不起訴不当、残り19人を不起訴相当とする議決を出した。この議決で「河井大規模買収事件はまだ終わっていないんだ」と気づいた人も多かったようだ。

 買収は、お金を配った者と受け取った者がいて成立する。検察としても河井克行元法相・案里元参院議員の現職(当時)国会議員を逮捕・起訴するには大変な勇気と決断がいったことだろう。2人の有罪は確定し、失職した。だからと言って、現金を受け取ったと認めている100人全員を不起訴したことは、どう考えても納得いかない。

 国民から抽選で選ばれた11人の委員の判断は、市民の感覚・目線から的確だと言える。克行・案里夫妻の罪が重いのは当然だが、100人とも公選法違反(被買収)罪が成立する。特に、公職にある議員や首長という立場で違法な現金を受け取ったことに「責任の重さ、情状の悪質性に鑑み起訴するのが相当」としている。

 県議・市議らは「公職」をどのように考えているのだろうか。公職の責任に対する認識が欠如しているとしか思えない。腹立たしいだけでなく、こんな人が県議・市議にしがみついている姿は実に情けなく寂しい限りだ。

 検察に一日も早く起訴させるために声をあげていこう。             (山根岩男)  

                                                                                                                                              (22.2.6)

 

 大阪府政に

  丸ごと協力する読売新聞の行く末は?

 

 「貧すれば鈍する」とはこのことか。読売新聞大阪本社が大阪府と包括連携協定を締結したと知り、唖然とした。協定によると、両者は「パートナーとして密接な連携により、府民サービスの向上、府域の成長・発展を図ることを目的とする」とし、教育・人材育成から情報発信、地域活性化、産業振興、環境に至るまで府の施策全般に及び、あのカジノ誘致とセットで進められる大阪万博の開催に向けた協力も含まれるという。これには、すぐさまジャーナリスト有志が抗議声明を出し、短期間で数万人の賛同署名が集まったと伝えられているが、当然だろう。

    国民の「知る権利」は「あらゆる権力から独立したメディアが存在して初めて保障される」とうたう日本新聞協会(もちろん読売も加盟している)の「新聞倫理綱領」に反するのは明らかで、大阪において読売は報道機関の立場を投げ捨て、府の広報機関に堕するものと言わざるを得ない。もっとも、読売にすれば既に国政において安倍政権時代から改憲の旗振り役を果たすなど政権寄りの姿勢をずっと取ってきたのだから、今さら維新の大阪府政と一体化するのかと批判されたところで痛くも痒くもないのだろう。

    それより、同協会が発表したスポーツ紙を除く一般紙の昨年の総発行部数は前年より約180万部も減り、3千万部を割り込む寸前になっている。全国紙・地方紙を問わず新聞の経営が厳しい現実にあるのは否めない。日本で最大の発行部数を自認する読売とてその例外ではなく、「権力の監視がジャーナリズムの本分」などと青臭いことばかり言っていては社の存続自体がピンチに陥る、ほかにどんな手があるのかと経営陣は開き直っているようにも映る。だが、例えば企業経営者の集まりである経済同友会でさえ不偏不党を標榜し、行政とは一線を画す。個別の社会経済課題に対する取り組みで協力することはあっても、丸ごと政府の応援団になるのではなく、あくまで行政のなすべき施策について提言するのを旨とし、時には注文を付けたり批判もしたりするのである。「武士は食わねど高楊枝」とまでは求めないが、食うために是非を問わないと言うのであればもはや読売には新聞を名乗る資格はない。この手は活路を開くどころか“自殺行為”になると声を大にして言いたい。                        (S)

                                                                                                                                                (22.1.24)

 

  日米地位協定の実態を今こそ伝えよう

 

 中国新聞は人口10万人当たりのコロナ感染者数をグラフで掲載している。1月16日付紙面によると、7日から13日までの1週間でワースト1は沖縄県662.43人、2位が広島県154.02人、3位が大阪府87.38人、4位が山口県84.20人、5位が東京都74.92人である。

    沖縄、広島、山口は、米軍基地があったり隣接していたりする地域である。今回のコロナ感染拡大が米軍由来であることは明らかだ。大阪が東京よりも多いのは、府政与党の維新の「身を切る改革」により公衆衛生部門の縮小が進みすぎた結果ではないか。人口当たりの死亡者数でも大阪は全国最悪である。

    日米地位協定により米軍は検疫なしで入国できる治外法権状態であり、広島県民としては一刻も早く協定を変えてほしい。そのためには新聞やテレビがもっと実態を報じて弱腰の政府に迫ってほしい。共産党の「しんぶん赤旗」は、連日のように報じているが、どうも一般紙は質も量も足りない。そんな中で東京新聞が頑張っている。

  https://www.tokyo-np.co.jp/article/154289

    米軍基地がある各国比較をするだけでも日本政府が米国に言うべきことを言ってこなかったことがよく分かる。こういう実態をいまこそ繰り返し報道してほしい。               (F)

                                                                                                                                                (22.1.18)

 

   米軍基地から染み出たオミクロンコロナ

 

 コロナウイルスの変異株オミクロン感染が急速に広がってきた。国は1月7日、沖縄、広島、山口の3県に蔓延防止等重点措置の適用を決定した。今回の流行がこれまでと違うのは、米軍による感染拡大が大きな要因ということだ。沖縄県の玉城デニー知事は「米軍基地から染み出してきた」と怒りをあらわにし、広島県の湯崎英彦知事も米軍岩国基地の司令官らへ、感染者や濃厚接触者の基地からの外出禁止や2週間隔離を要請した。

 本来なら日本の保健所が基地内で立ち入り検査し徹底的な封じ込めを行うべきである。しかし、日米安保条約で特権を持つ米軍基地にはそれができないとされている。それどころか米兵の入国、出国にすら日本側は関与できないのだ。

 中国新聞の報道によると、日米地位協定第9条により、在日米軍の構成員は旅券やビザに関する日本の法令が適用されず、岩国基地にも米本土から軍用機で直接乗り入れている。他の外国人は新規入国が原則禁止されている中で米軍だけは特別扱い。出入国時の水際対策について、米側は従来「日本の対策と整合的な措置を取る」としていた。しかし、9月以降はワクチン接種の進展を理由に、出国時にPCR検査をしていなかった。さらに岩国基地はワクチン接種者を対象にマスクの着用義務を大幅に緩和していた。日本政府の要請でPCR検査は再開され、岩国基地はすべての施設でマスク着用を義務化した。しかし、基地は米軍関係者の感染経路や行動歴のほかオミクロン株の検査の有無も公表していない。

 米兵たちはJR山陽本線を利用している。私もときどき同乗する。この人たちが昨秋以降はPCR検査も受けずに入国していたのだ。基地内でクラスターが発生しても自由に外出していたのだ。なんということだろう。断っておくが、米兵に怒っているのではない。沖縄知事は昨年末から米軍基地への厳しい対策を求めていたのに、国は適切な対策を講じたのだろうか。市民の安全を保障しないで何が日米安保か。日本政府は即刻、基地内に立ち入り検査をし、感染実態を公表し、今後の対策を明らかにすべきである。

                                                                                                                                                             (F)                                                                                                                                  (22.1.7)

 検察をただすのは「市民の声」

 「河井疑惑をただす会」は7月30日、東京地検が河井克行・案里夫妻から買収と認識しながら金を受け取った被買収者100人を不起訴にしたのは不当だとして、市民268人とともに東京検察審査会に申し立てた。翌朝の中国新聞は審査申立について分かりやすく解説しながら、私たちの取り組みを紹介してくれた。

 30日には安倍晋三前首相の「桜を見る会」で、東京検察審査会が「不起訴は不当」と議決したとの報道もあった。検察庁も権力機関という見方がある。たしかにその一面もあると思われる一方で、「法の番人」という面もあるのは間違いない。権力に忖度して「巨悪を見逃す」ことがあってよいわけはない。これをただすのが「市民の声」ではないだろうか。

 あきらめず、声を上げ続けよう。(岩)


   ワクチン不足の責任者を処分しろ

    孫の世話で大変と、にこやかに語っていた知人が声を荒げた。

  「61歳の自分は7月5日からワクチン接種券が郵送されるはずだったのに延期になった。なんでや。大企業が社員向けに大量のワクチンを確保したんと違うんか。許せん」

    全国でコロナワクチン接種がスムーズにいかなくなってきた。五輪目指して急ピッチの接種を誇っていた菅首相も真っ青だろう。

    訳の分からないことが多すぎる。ワクチンは十分にあるから早く打てと自治体の尻をたたき、企業には社員向けの接種会場を用意させ、自衛隊直営の接種会場もつくったのに、なぜワクチンが足らないのだ。言い訳はいろいろ言われているが、見通しを完全に誤ったのは事実。国民の命に直結する問題なのだから、責任者を処分するのが常識だろう。責任者は河野大臣と菅首相。両方とも厳正な処分を求めたい。彼らの使用者は主権者である、わたしたちなのだ。(元)


   検察は一日も早く  被買収者を起訴すべき!

 東京地裁は6月18日、河井克行元法相に対し「民主主義の根幹である選挙の公正を著しく害する極めて悪質な犯罪だ」と懲役3年の実刑判決を下しました。これより先の2月、妻の案里氏の有罪が確定し、当選無効となり、4月の再選挙では立憲野党の統一候補の宮口治子さんが自民の新人に3万4千票差をつけ勝利しています。

 克行氏の裁判では100人の被買収者全員のカネの受け取りは「買収」と認定しています。それなのに東京地検はいまだに被買収者を起訴していません。私は東京地検特捜部にほぼ毎週、「一日も早く起訴すべきだ」と要請の電話をしています。これには「個別の事件については答えられません」の繰り返しです。

 これは異常です。仮に捜査段階で司法取引があったとしても、権力に忖度したとしても、一日も早く起訴すべきだと思います。森友・加計事件、桜を見る会、そして河井大規模買収事件、検察を見る国民の目は厳しさを増しています。「検察をただす会」にならないことを願っています。      

                                                                                                                         (山根岩男・河井疑惑をただす会)                                                                                                                                                  (21.7.3)


 「早い者勝ち」のワクチン接種予約にストレス

 新型コロナウイルスのワクチン接種は、自治体によって予約受付の仕方がまちまち。私の住む府中町では5月3日から高齢者を85歳以上、75歳以上、65歳以上と3区分して順次受付が始まった。個別接種は指定医療機関(かかりつけ患者のみというところが多い)に直接電話するなどして申し込み、集団接種は1回目の接種日の1週間前の午前8時半からコールセンターへの電話とウェブで予約を受け付ける方式になっている。

 私は、自身の予約が可能になった13日から毎朝8時半前にパソコンでウェブ受付システムを開いてスタンバイ。開始時刻になって予約可能のサインが出ると同時に手順に従って接種会場、日付、空きのある時間枠を選択してマウスを動かし、最後は確定ボタンをクリックするが、10秒もたっていないと思うのに「この時間での予約は取れませんでした」の表示が出る。一方で、妻にもコールセンターへの電話をかけ続けてもらったが、つながったためしはなし。ウェブで7回目のチャレンジでようやく6月2日の接種の予約が取れた。この間、ストレスたまりっぱなしで胃が痛んだ。

 朝日新聞の投書で、83歳の女性が「この対応、何なのでしょうか。なぜ『早い者勝ち』ですか」と嘆いているのを読んだ。この人は一人暮らしで電話しか予約申し込みの手段がなかったのだけれど、一応はパソコンを使える私も操作の手が遅く、同じ思いをした。単に10歳刻みにするだけでなく、生年月日や名前の五十音順で区分けして順番に接種日を指定し、都合の悪い日は後ろにずらして再指定するといった、もっときめ細かい対応が取れないのだろうか。政府はデジタル庁をつくって社会全体のデジタル化を促進することに躍起になっているが、まだまだアナログ人間の高齢者はいっぱいいるし、高齢でなくてもデジタル機器を駆使できる者ばかりではないし、スマホを持てない人すらいる。そんな“デジタル弱者”が生きづらい世の中にしてはならないと、このワクチン接種予約体験で改めて痛感した。(井上)

                                      (21.5.29)


 コロナ休業、街にあふれる

 自宅近くの宮島街道は、私のウォーキングコースだ。臨時休業の張り紙が多いのにあらためて気づいた。「広島県の要請により5月31日まで休業します」と同じような張り紙がしてある。それでもコロナ感染は衰えず6月20日で緊急事態宣言が延長になった。

 営業は続けてもアルコール提供をやめた店もある。新規開店を延期した店もあった。宮島口桟橋の新しくなった飲食店スペースは、昨年4月のオープン直後に1回目の緊急事態宣言が出て休業になり、感染拡大のたびに何度も休業を繰り返している。たまったものではないだろう。

 経営者も大変だろうが、労働者はもっとひどいことになっていないか。パートや非正規が大半だろうから、まともな補償もなしに解雇されてはいないだろうか。この間のコロナ騒動ではっきりしたのは、飲食業界のもろさだ。もともと平和な平常時に繁盛する業界である。感染の危険を冒してまで飲食する人はいない。厚労省の役人が市民には自粛を呼びかけながら、自分たちは忘年会でクラスターを発生させたが、そんなバカ者はわずかだ。国や県にはもっと手厚い補償を求めたい。店を開けても客が来ず、閉めたほうが経費もいらず、いくばくかの協力金も入るので休業する業者もいるだろう。業者を責めているのではない。もともとそういうもろさを持った業界なのだ。

 そういう飲食業に多くの若者が従事している。一方で、第一次や二次産業は今も人が足りない。サービス業から農業や製造業に労働力をシフトする政策が必要だ。その前提としてサービス業重視の産業政策を改める。外国人観光客誘致を景気の切り札にするような政策からの大胆な転換を求めたい。それと地方への移住促進。密を避けるには人口の少ない地方で暮らすに限る。GO TOトラベル、デジタル社会、東京オリンピックなど浮き草のような景気浮揚策ではなく、大地に根を張る働き方と暮らし方を支える政策に変えてほしい。(藤元康之)                         (21.5.29)

 


 コロナワクチン1回目を接種

 コロナワクチンを5月25日に接種した。午後3時の予約時間の20分前に自宅から車で10分ほどの集団接種会場に行った。いつもはガラガラの駐車場がほぼ埋まり、施設の入り口にも人が並んでいる。これは相当待つかなと思ったら、15分前から受付開始と案内があった。

 受付では、事前記入の予診票と接種券を提示すると、係員が名簿をチェックし体温測定して終了。誘導に従って階段で2階へ。エレベーターも使える。2階にも受付があり、今度は本人確認のため運転免許を提示。次に医師の問診がありOKが出ると、いよいよ接種。私の担当は女性の看護師さんだった。筋肉注射特有のチクリと痛みがあっただけ。すぐそばに最終チェック場所があり、接種券をはがして回収し、代わりに予防接種済証(臨時)という紙片を張り付けてくれた。製造番号や製造販売ファイザー株式会社などと書いてある。大切な証明書だ。これがないと外国にも行けないらしい。もっともこのコロナ禍のなか、海外旅行することもないだろう。最後に渡された紙片には「15時13分まで休んでください」旨が書いてある。

 瀬戸内海を望めるロビーで、みんなゆったりしている。受付では緊張感があったが、ワクチン接種できた安堵感が広がっている。私の場合は受付開始から30分足らずで終わった。15分休憩と30分休憩の2通りあるので、長い人は45分ほどかかるのだろう。

 ここ廿日市市では予約は5月6日から始まった。電話は案の定つながらなかったが、ネットではスムーズに予約できた。妻は掛かりつけの医院に予約すると言っていたが、ネット予約が簡単だったのを見て、同じ場所を日にちを違えて予約した。早かったからスムーズにできたのか、この市くらいの人口規模だと混乱がないのか、市のシステムが良いのか。いずれにしても私の場合はニュースで言われているような混乱はいまのところ経験していない。2回目は6月15日に同じ場所でする。(藤元康之)

                                                                                                                                                 (21.5.29)


 河井大買収事件 

 1億5千万円の解明なしに終結はありえない

  河井案里氏の当選無効に伴う参院広島選挙区の再選挙、衆院北海道2区、参院長野補選の野党統一候補の3つの勝利は劇的でした。とりわけ「保守王国」と言われる広島での野党の統一候補・宮口治子さんの当選は政界に激変をもたらしているように私には見えます。

 河井疑惑をただす会の有志6人が、案里氏は当選無効になったのだから、国は案里氏に支払った4,942万円の返還を求めよと東京地裁に訴えました。県民には大規模買収事件に対する批判が強くあるのですが、それに劣らず、雲隠れして説明責任を果たさず、国会議員としての仕事もせず、多額の給料(歳費)を受け取った河井克行・案里夫妻への怒りは抑えきれないものがあります。

 選挙の結果をみてやっと気づいたのか、自民・公明は有罪が確定した議員の歳費返還ができるようにする法改正へ動き始めました。法改正を手柄に金権選挙「政治とカネ」は終わったことにして、秋までにある総選挙に臨みたい下心が見え見えですね。

 今回の大規模買収事件は、自民党本部から河井夫妻に送られた1億5千万円の解明なしに終結はありえません。ところが、二階幹事長は5月17日の記者会見で「私は関係していない」と主張、会見に同席した林幹雄幹事長代理は「実質的には選対委員長が担当していた」と話しました。これに当時の選対委員長だった甘利明氏は「1ミクロンも関わっていない」「全く承知していない。事件後の報道で初めて知った」と反論しました。

 真相は如何に! 案里氏の選挙では、当時の安倍首相と菅官房長官がテコ入れに懸命だったことは知られています。案里氏の選挙ビラ(うちわ)には、安倍首相、菅官房長官、二階幹事長が仲良く顔を並べた写真が掲載されています。自民党幹部が責任を押し付け合い、説明責任を果たさないなら、勘ぐっても罪には問われないでしょう。「やっぱり安倍、菅、二階の3人で…」と。(山根岩男)

                                     (21.5.26)


  金もらった議員をしっかり監視しよう   

    河井克行・案里夫妻による大規模買収事件。2人とも買収を認め辞職、案里氏の失職、当選無効による参院広島選挙区の再選挙は8日に告示、25日に投票です。

   検察は案里・克行両氏を起訴しただけで、お金をもらった被買収者は起訴していません。それをよいことに自民党の公認候補の選対に顔を出し、支援をしようとしている議員もいます。こんなことが許されていいのでしょうか。河井疑惑をただす会は「再選挙110番」活動を呼びかけています。有権者がチェックする活動です。

   買収事件では、被買収者も買収者と同様に重罰です。8年前の三原市沖の佐木島を揺るがした買収事件では、現金40万円入りの封筒を渡された区長が、一晩預かり、「やはりまずい金だ」と思って市議に返還しました。選挙後、県警の捜査員は、買収罪は受け取った時点で成立する。「1日預かっただけでも買収」と言い、この区長は罰金20万円、公民権停止5年の罪となりました。中国新聞が「決別 金権選挙」⑤で取り上げています。

 3月末の広島市議会の調査会での13人の話を傍聴しましたが、まったく反省の色は見えませんでした。山田春男議長は「一区切り」と会見で述べて、私にはまるで「自由に動いてください」のGOサインに思えました。

 被買収の首長・県議・市議は40人です。この人たちは、佐木島の例からすれば、もらった現金の半分の罰金、そして公民権停止です。いったん辞職し出直し選挙で当選している議員も、即、失職です。選挙活動をしている被買収議員=別表=らをみたら、「再選挙110番」090-8245-2273(山根)へ通報してください。

                                       (  山根岩男・河井疑惑をただす会) 

                                                                                                                                              (   21.4.7)


  経済はほんとに疲弊

 コロナ禍の下、こんなに「経済」が悪いのに、なんで株高が続くのか?と首をひねり続けている。

 身近な経済の衰退は間違いない。そのことを実感した一つの出来事が尾道駅のテナント撤退だ。

 駅舎は昨年3月にリニューアルされたばかりのピカピカ。なのに、駅舎2階の宿泊施設は10月に営業停止。高級サンドイッチ店も11月に店を閉じた。駅舎1階のレストランも12月上旬で閉店。土産物店も1月に閉じる。

 JRが瀬戸内観光の玄関口にしようと17億円もかけた取り組みに大異変が起きている。(波)

                                     (20.12.23)

 「桜」の芽を伸ばそう

 悪事のすべてをリセットするのに成功したかに見えた前首相。冬を迎えるこの時期に、足元から「桜」の芽が伸びてきた。ここにきてなぜ表面化? 検察が意地を見せているのか。「三度目の登板」を止めるための現政権側の仕掛けか。

 ところが28日、現首相にも疑惑が浮上。選挙区である横浜市内の高級ホテルで1,500円会費の大規模集会を開きながら、その収支を政治資金報告書に記載していない。

「桜」そっくりの疑惑。菅さんどう答える?(健)             (20.12.5)  


 大統領会見を中断した米テレビ

    大統領選挙開票の最終盤を迎えた米国で5日夜、トランプ大統領の記者会見を中継していた米テレビ局が突然、中継を打ち切った。大統領の発言は何も裏付けがありませんでした、と女性アナウンサーがコメント。さすが、「表現・報道の自由」を合衆国憲法修正第1条に掲げる米国。この場面に「米メディアの根性」を見た思いだった。

 米国では、ツイッター社がトランプ氏のフェイクな呟きとみても大統領在任中はカットしてこなかったが、選挙後はカットする方針とか。SNSの普及が米国の民主主義に新たな問題を提起しているようだ。

 で、翌6日の午後に見たのが学術会議の会員任命拒否で揺れる日本の国会予算委とそれを伝えるNHKニュース。内閣府と学術会議の事前「調整」を巡って、事実上の「介入」だと共産党議員に突かれ、回答不能に陥ってメモを棒読みするだけの菅首相。それなのに、画面には答弁する首相を映し出し、バックで政府見解を繰り返し解説して終わるいつものパターンだ。政権とメディア、日米とも厳しい関係だが、NHKの過ぎた忖度はいただけない。 

    その続きで7日の日本の新聞報道に注目したが、米テレビの中断事件は朝日新聞が伝えていたが、中国新聞では確認できなかった。朝日は「彼ら(民主党)は不正工作を行おうとしている」「郵便投票は腐敗と詐欺に満ちている」などと大統領の主張を紹介し、「しかし、根拠は示しておらず、主要テレビ局は会見中に中継をやめた」と1面で伝えた。(太田)                                                                                                              (20.11.14)


 あきらめないこと

 「安倍さんにはファイティングポーズが取れたけど、この人はどうも……」。菅首相の国会答弁を聞いていると、怒りより無力感に陥る。学術会議問題で「人事に関することはお答えを差し控えさせていただきます」と、棒読み答弁を繰り返されると、眠たくなってテレビを消してしまう。でも、これが狙いなのだ。「何を言っても無駄ですよ、絶対権力者なんだから思う通りにできるんです」と、主権者である私たちをあきらめさせるのだ。闘いに勝つ方法を聞かれて沖縄県知事だった故翁長雄志さんは「あきらめないこと」と明快に答えた。今こそ、この言葉を胸に刻む。(藤元康之)

                                     (20.11.8)


   安倍より酷い!

    安倍を辞めさせることに必死で、安倍政治より酷くなることは考えもしなかった。私物化の安倍、強権の菅。安倍の路線を突き進み、意見の合わない官僚や学者を排除する姿勢が露骨だ。理由を明らかにしない学術会議の任命拒否は納得できない。この2人に限らず、国民のために真摯に働く政治家が、日本にはいるのだろうか。世界一貧しい大統領と呼ばれたホセ・ムヒカ元ウルグアイ大統領のような政治家は、日本にいるのだろうか!? (K)                                                    (20.11.2)


 問答無用の官邸対応

 NHK報道陣の矜持を感じた。29日夜に放送された「クローズアップ現代+」によると、「学術会議問題」で2年前の会員補充人事でも官邸の杉田官房副長官が会議側の選考に難色を示し、前会長が何度も面会を申し入れたが、杉田副長官は会う必要はないと断り、結局、会員補充は行われなかったと証言したという。また、今回の任命拒否で任命されなかった学者から指導を受ける学生たちにまで誹謗中傷が及び、萎縮が見られるなど影響が広がっているとも伝え、既に学問の自由が脅かされている事態を明らかにした。この問題でNHKのさらに深層を突く続報を期待し、エールを送りたい。(友)                                                                                                                                                                          (20.11.2)


    菅政権の本質をズバリ表したい

    国会が開会した10月26日夕方、広島市の繁華街で「総がかり行動実行委」の街頭宣伝があり、私も事務局の一員として参加した。本来ならここで菅政治の本質をズバリ表現するテーマを出したかったが、「菅政権は説明責任を果たせ」という陳腐な言葉しか出てこない。安倍政権のときは、総がかり行動の名称にもなった「戦争させない 9条壊すな」の一言で表現できたのだが、菅政権はなんと言えばいいのだろう。自らの国家像や理想を語ろうとしない首相は、私たちにキャッチフレーズを作らせない作戦なのか、言葉にできないくらいのスカスカなのだろうか。(藤元康之)                                                

                                     (20.10.27) 


    この怖さ、並みじゃない

    菅義偉論に苦笑していた。秋田から集団就職で上京した苦労人という話は、たんなる「自分探し」の青春放浪だった。官房長官になるや、同じ東北出身の雑誌記者に電話して、故郷を出たいきさつを修正する長いインタビュー記事を書かせていた。

    芸の細かさに驚いていたら、8年前の自著を今回改訂発行した新書で「政府があらゆる記録を克明に残すのは当然」と訴えるくだりの章がなぜか削除された。ここまでくると、ほんとに怖い。この人物、恐るべし。(難)                                                                                                                                           

                                     (20.10.27) 


      おうちアウトドアを楽しもう

 「コロナ」が怖いので遠出を避けている。小学3年の孫と「おうちアウトドア」を楽しんだ。急ごしらえのカマドで廃材を燃やし、飯を炊いてラーメンをつくった。気分爽快、腹いっぱい。最近は焚き火をしてはいけないそうだが、このくらいなら許してもらえるだろう。

    いまの子どもたちは、火のつけ方を知らない。孫には「これを覚えておいて、万が一のときは家族を助けるんだよ」と言っておいた。冗談で終わればいいのだが、近年の異常気象、それに伴う災害多発をみると、杞憂とは言い切れないところが怖い。(環境居士)

                                                                                                                                               (20.10.25) 


    公式会見開かせるのはメディアの責任

 菅義偉首相が記者会見した。訪問先のインドネシアでのこと。国内では番記者らとの朝食懇談会(オフレコが条件)や代表3社による「グループインタビュー」とやらばかりで、とんと公式の記者会見は開かなかったのが、これは外遊に伴う“お決まり”の場として設定されたようだ。ただ、各紙に掲載された記事を読んでみると、特に日本学術会議の会員任命拒否問題については従来の言い分を繰り返しただけ。重ねての質問があったのかもしれないが、掲載記事を見る限りは菅首相の言い放しのように思える。記者の仕事の第一歩は聞くことというか、知りたいことを聞き出すことではないか。そのためにも、この問題に限らず公式の記者会見を開かせることがメディアにはまず求められている。(和)        (20.10.25) 


 「ゆでガエル」になっていないか 

 「ゆでガエルの温度が5度上がった感じ」と映画監督の森達也さんが、学術会議「事件」を語っていた。40年前にあったカンボジアの大虐殺。最初は学者たちへの迫害だった。次第に医師や教師らに広がり国民の3分の1が殺された。なぜそんなことが起きたのか。つい40年前の現代において?

   人類は環境にうまく順応する馴致能力が突出しており、異常が分からなくなる。ナチスのホロコースト、米国のマッカーシズムなど歴史は教訓を残している。

   野党ヒアリングで語る森監督の言葉に私は共感した。まともな国会を開かない自公政権の、この姿も異常なのだ。自分も「ゆでガエル」になっていないか常にチェックしよう。(藤元康之)

                                                                                                                                                      (20.10.24)


  主戦場はどこにある?

  10月22日、衆院議員の任期が残り1年を切った。解散の時期をめぐり、シナリオは3つか4つと言われる。だが、この詮索には意味がない。コロナがどうなるかで、事情が全く変わるからだ。「1年以内に必ず政権選択の総選挙」と受け止め、準備を怠らぬしかない。

 主戦場はどこにある? 国家観も政策綱領も語らぬ菅首相だが、支持率は急降下している。どう攻めるか。「国民は自分の民度を超える政治家をもつことはない」という言葉を肝に、現在の政治劣化は何を反映したものなのか、まずは自らに問うてみる必要がある。(治)

                                (20.10.23)


  主権者に見捨てられる報道機関

「説明責任が問われる」という言葉が常套句になったのはいつからだろうか。これは報道機関の責任放棄のような気がずっとしていた。説明させるのは、自分たちの責任だろう。「首相の考えを伝えたいので、記者会見を開かせてほしい」と言わせるのが、本来の報道機関である。記者たちは主権者である私たちの代弁者であるし、それにしか過ぎない。学術会議の会員任命拒否という「大事件」なのに、代表インタビューしかできない記者たちは主権者から見捨てられる。(藤元康之)                                                                 (20.10.23)


  軍歌は「エール」じゃない

 NHKの連続テレビ小説「エール」、作曲家古関裕而がモデルです。先週は主題歌の「エール」が消えました。軍は戦意高揚の作曲を依頼、出来上がった曲は、『露営の歌』『若鷲の歌』、若者を戦場にかきたました。音楽慰問で訪れたビルマ、無謀なインパール作戦は描かれませんでしたが、『若鷲の歌』に共感し志願した若い兵士、恩師たちが次々戦死していきます。軍歌は本当の「エール」ではない。NHKが政府に忖度する番組作りが進む中で、「エール」制作者・出演者の決意を感じました。                       (岩)                                                                                                                                                                   (20.10.23)


        あなたは声をあげないの?

 「はじめにおわりがある。抵抗するなら最初に抵抗せよ」と言ったのは、反骨のジャーナリストむのたけじさんである。「ナチスが共産主義者を攻撃し始めた時、私は声をあげなかった。私は共産主義者ではなかったから」で始まる警句を残したのはドイツの牧師さんだ。

 菅首相による日本学術会議任命除外を扱ったコラムで見つけた。だが、注目したのは次の一文。〈身内から聞こえぬ異論こりゃ魔窟〉という川柳を引用した「政権党の内部が危ういのではないか」との指摘だ。危機はそこまで来ている。

 「あなたたちは声をあげないのですか」。与党の側にもそう声をかける一人の市民でありたい。(波)                                                                                                                                                     (20.10.23)